異をとなえん |

「犬と鬼」感想

2008.01.31 Thu

00:54:55

アレックス_・カー著「犬と鬼 知られざる日本の肖像」を読む。痛烈な日本批判の書である。日本の自然伝統が破壊されていくのを黙って見ていられないという真摯な感情が強く出ていて、共感してしまった。

同意というか打ちのめされる事項がいっぱいあって、どちらかと言うと日本称賛派の私としてはいたたまれない気持ちになる。自分はやはりあまりにも世間知らずなのかも知れないと思う。だからと言って全部が全部同意できるわけでもなく、反論したい事もいっぱいあった。

しかし、圧倒的に悲惨な現実の前には、なんとか改革していきたいとしか言えない。少くとも無意味な公共工事を減らさなくてはいけない事は、はっきりしている。2002年4月にこの本が出版されてから、公共工事費がずっと減り続けている事でいい方向に向かっていると主張したい。

ただ、筆者は日本の美しさや伝統を重視して、それを壊す動きを批判している。しかし、河川をコンクリートで埋め立てる事によって洪水から身を守れるならば、それは日本の美しさより優先される事だと思うし、京都の景観が開発によって壊れたとしても、住民がそれを望むならば仕方がない。

これは、東京で生まれ育ち、コンクリートに囲まれ、電信柱が立っている世界を所与の物として受け入れた私には、たぶん本当の自然の快適さというものがわからなくなっているからだ。しかし、たとえそうであっても、コンクリートの土手はふるさなのだ。醜いなんて思えない。

参考文献がないのが、少し惜しい。読んでるだけでは本当に正しいか判断しかねる所があり、より深く調べるために参考にした書籍の記述が欲しかった。
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日本の外資恐怖症は当然である

2008.01.30 Wed

04:19:19

NHKスペシャル「日本とアメリカ 第2回 ジャパン・パッシング “日本離れ”との闘い」の中で日本人の外資恐怖症という話が出ていた。そこでは、在日商工会議所の会頭が外資恐怖症は根拠がないと主張していたが、それはおかしい。外資恐怖症は明白な根拠がある。

ほとんどの日本人は英会話などできない。上司とコミュニケーションがうまくできなければ、感情を共有していく事は難しい。どうやって、自分の功績をアピールし昇給昇進を勝ち取っていくかもわからない。これで外資恐怖症にならなければ、どうかしている。

逆に言うと、英米が際立って外資に対して開放的なのはこのためだ。英語が国際標準語であるために、上司がどこの国の人間であろうと、英語を喋る事が期待されるし、そうでなくてはならない。英語である程度コミュニケーションできない上司はビジネスマンとして失格であろうし、かつ英語が自国語でない上司に対しては能力的、精神的に優位に立てる。完全に英語ができない上司は別だろうが、ある程度英語ができる上司というのは理想的なのだ。コミュニケーションがスムーズに取れるならば、わけもわからず怖がることはなくなる。外資系企業の参入を歓迎し、結果として、英米には多くの外資系企業が参入している。

さらに言うならば、英語が自国語でない国では、日本と同じように外資を好むとは到底思えない。他の国でそれが目立たないのは、多くの場合既に外資が支配的な地位を占めていて、英語ができて当然という認識だからではないか。日本で漢字を含めた日本語の読み書きができて当然であるという認識のように。

しかし、外資恐怖症で何が問題だろうか。日本企業に対して技術、経営の面で圧倒的に有利な外資系企業は、日本に外資恐怖症があっても、制度的に参入障壁はないのだから、進出してくる。当然利益を上げるだろう。日本としては対応していくしかない。それに対して、技術、経営の面でとりえがなく、ただ単に資本しかない企業が日本に進出したがっている場合、外資恐怖症なのだから、はっきりとした優位がなければ、なかなかうまくいかない。こういった企業が日本の外資恐怖症を批判する事になる。しかし、日本は現在資本は余っているのだから、資本だけの企業など来てもらってもうれしくない。外資恐怖症だから、ジャパンパッシングかも知れないが、それはそれで受け入れていくしかない現実だということだ。
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アメリカの金融業の将来-日本とアメリカの違い(その4)

2008.01.29 Tue

04:24:36

アメリカ金融業が本当に付加価値を上げているかを分析しようとして、前回は途中で寄り道に入ってしまった。もう一度考えると、そもそも金融業は資金が余っている所と資金がない所を見つけて、そこに適正な利子をつける事によって結びつけ儲ける商売である。現在の国際経済では、日本や中国みたいなアジアの国々が金を持っていて、アメリカが金がない状態である。だから、アジアの国から金を集めて、アメリカに投資するのは正しい商売であり、金融業の活躍できる場所である。

たぶん、アメリカは経常収支の大量の赤字を埋め合わせるほど借りていても、鞘を抜いて外国に貸し出したり、借りた金で新事業を起こしたり、そして借りた金で消費したりしていて、算盤は合っていたのだと思う。算盤が合うというのは、一見経常収支の赤字で持続不可能に見えても何とかなるということだ。最も新事業が利益を上げ借金を返済できても、それが輸出できなれば経常収支の赤字を削減する仕組みは理解できないが、まあたぶん何とかなるのだ。なんとかなるというのは、付加価値を上げていると理解して欲しい。

しかし、一見算盤は合っていても机上の計算ということはよくある。今回もサブプライムローンのように借金が返済できなくなれば、最終的には経常収支の赤字の問題も解決できないはずである。中東からの資金の受け入れは、結局借金をより悪い条件での借金に切り替えたに過ぎない。借金がより悪い条件になるというのは、破綻の可能性が増すということだ。

借金の条件が悪くなった状態で返すためには、より利益を上げるようにするか、自分たちの分の利益を減らすとか、資産を処分するしかない。

より利益を上げるのは難しい。アメリカの金融業にとって、債権の証券化と格付けシステムと証券をバラバラにして組立直すこと(これの専門用語はなんだ?)は利益を生み出す打ち出の小槌であったが、今回の危機によって非常に打撃を受けたと思われる。将来はともかく短期的にはどうにもならないだろう。通常の証券の格付けは多分、別だとは思うが。

結局、自分たちの利益を減らすか、処分するしかない。これはアメリカ全体で考えれば景気を悪化させ消費を減らす方向に動くしかないように思う。
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「すごい製造業」感想

2008.01.28 Mon

04:33:37

朝日新書の「すごい製造業」は、けっこう面白かった。

日本の技術力はまだ落ちていないとあり、自分の予想と一致していることもあって楽しく読めた。自分の願望と一致していると言うことは、あまり驚きもないと言うことだが、それでもはっとするような事実はあった。

本の中身とあまり関係ないが、一番びっくりしたのは、外国人労働者の日本での研修制度はそれなりに役に立っているという指摘だ。外国人研修なんて単なる低賃金労働に過ぎず、廃止すればいいと考えている私にはちょっとした衝撃だった。

後、アメリカの製造業も技術力は落ちていないとあるのだが、これは現場の意見があまりなくて、今一つ説得力に欠ける気がした。ただ、気に留めておく必要があると思う。

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ドル安にならない訳-日本とアメリカの違い(その3)

2008.01.27 Sun

03:35:48

前回はアメリカ経済の金融業が本当に十分な付加価値を生み出しているか怪しいのではないか、ということで終わっていた。これをもう少し考えてみよう。

まず、今回のサブプライムローン問題による金融収縮局面での状況を観察してみる。アメリカ金融機関が今回のサブプライムローンのような、価値の十分無い所にばかり融資しているのだとしたら、ドルに資金が入らなくなってドル安になるのではないだろうか。

「ドル安相場」と考えるのは間違い?を見るとサブプライムローン問題が表面化した後も、それほどドルは安くなっていない。2007年11月以降は、より危機が深まっているがドル高になっている。確かにドル円相場は円高ドル安に傾いているが、実効レートを見るかぎりドル高ということは、その他の通貨についてはそれをおぎなって、ドル高になっているということである。これはどうしたことだろうか。

金融収縮の発生によって、起債できず運転資金のやり繰りが困難になっている借り手を考えよう。これは諸外国からアメリカで資金を調達している会社とアメリカ内部の会社と二種類ある。アメリカで資金を調達しているということは、どちらもドル建てである。諸外国からの借り手は新たに起債ができなくなっている以上、なんとか自国から金を集めドルに変換して返却するしかない。これは当然ドル高要因である。

一方、アメリカ内部の金融機関も返却する必要があるが、基本ドル建てである以上ドル資金を集めることになる。アメリカ政府が必死になって、資金を供給しているのでそれに頼るか、アメリカ国内の資産を売るか、アメリカ国外の資産を売るか、アメリカ国外で資金を借りることになる。アメリカ国外で資産を売った場合、アメリカ国外で資産を借りた場合、他国通貨で資金を手に入れて借金の返済で売るのだから、これもドル高要因となる。

諸外国の金融機関はアメリカに貸してある資金を返済されたからといって、急に自国通貨に変換する必要はない。そのまま、持っていて別の投資に回してもよいし、自国通貨が安い頃を見はからって変換してもいい。つまり、ドル安要因にはならない。

円がドルに対して高くなっているのは、資金が戻っているからではなくて、資金が出ていかなくなっているからだと考えると話が合っている。

こう考えてくると、ドル建てで運用している現在の金融の仕組みでは、金融収縮でドル高になるのは当然となる。もちろん、これは短期の話で長期になると簡単に分析できない気がする。現在、長期で見るとドルが下がっているのは、政策金利の引き下げなどでドルがだぶつき、かつアメリカ内部は起債されていない状態なので、自然にそれがあふれているからだろう。

アメリカ金融業が本当に付加価値を上げているかを分析しようとしたが、ドル安ドル高とは、あまり関係ない気がする。しかし、しつこく更に考察してみる。この項続く。
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ストックを作るのが大事

2008.01.26 Sat

04:08:02

ぐっちーさんの所からのリンクが切れたら、急にアクセス数が減ってしまった。今振り返えると、去年の11月ごろ、いきなりアクセス数が200以上になって私のブログも人気が出たなどと思っていたのだが、実はたまたまぐっちーさんの所からトラックバックが効いたに過ぎなかったようだ。それから、二ヶ月近く感覚的に1日100アクセスを稼いだのが、なくなってしまった。急にすたれた感じでさびしいなぁ。

なんとか、アクセス数を増やしたいものだが難しい。まあ、定期的にアクセスしている人が4、5人くらいしかいないというのが大きい。この理由は魅力ある文章を書けないというのも大きいが、読者の事を考えて書くよりも、とにかく切羽詰ってリリースしているが原因だと思う。結局は、まずストックを作れるようにならないとあかんということか。
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日本とアメリカの違い(その2)

2008.01.25 Fri

04:40:55

前回はアメリカ経済の問題は何かという所で終っていた。ただ、日米の経済の違いというのは私の現在の思考の主要テーマではあるのだが、アメリカ経済の問題とは結びついていない。そこをどうつなげるのが、苦慮しつつ話を始める。

まず、アメリカ経済の問題はもう一度再確認してみよう。景気後退はそれほど重要な問題ではない。好不況はあるのが当然で、それをことさら問題視しても仕方がない。問題なのはと考えた所で、実はよくわからなくなってきた。一人当たりGNPが長期にわたって停滞するというのが問題だという考え方がある。アメリカは今はなっていないけど、今後なりそうだから問題という理屈だ。

しかし、だとしたら日本こそが最も問題な国であることは明らかだ。日本は長期に渡って一人当りGNPがほとんど増えていない。日本経済こそが問題ということになる。でも、私は日本経済に対してそれほど問題意識を持っているわけではない。身びいきということもあるだろうけれど、アメリカ経済の問題と感じている部分が違うからだろう。それは何か。

結局、話が元に戻ってしまうが、経常収支の赤字分に相当する付加価値を生み出していないように見えるのが問題なのだ。本当にそうだろうか。アメリカの産業構造で大きな部分を占めている金融業は価値を生み出していないのだろうか。たとえば、アメリカは約1兆ドルの経常収支赤字を出したとして、諸外国から2兆ドル借りて、諸外国に1兆ドルで貸してバランスしたとする。その時、アメリカの支払う金利が3%で、受取る金利が6%ならば、実質的な借金は見合っていてバランスが取れている事になる。めでたし、めでたしである。金融業は価値を生み出しているといえる。

しかし、そうはやはりうまくいってない。今回のサブプライムローン問題はそこをついている。アメリカの金融業が巨大な損失を出し、数年分の儲けをはき出したということは、金融業が付加価値を生み出せなかったということだ。金融業が大量の人員解雇に走っているのは、無価値だったことを認めたことになる。一時的な相場の失敗であるとするならば、そのまま企業活動を続ければよいからだ。

ようやく話がまとまってきた。つまり、アメリカ経済の問題とは金融業が本当に十分な付加価値を生み出しているか怪しいということなのだ。この項続く。
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