異をとなえん |

日本は世界で石油を一番安く買っている

2007.11.14 Wed

03:13:39

増田悦佐氏の「高度経済成長は復活できる」(P214)に

二〇〇三年夏頃の日本とアメリカのガソリン価格を税抜きで比較すると、日本はリッター三十円くらい、アメリカはリッター三六円くらいで、アメリカのほうが約二割高かった。日本では原油はほとんど取れないので、世界中から安い原油を選んで買える。アメリカでは、巨大な利権を形成している産油資本にとって商売になる価格でしかガソリンを売ることができない。だから、原油をほとんど産出しない日本のほうが、原油をかなり産出しているアメリカより安いガソリンが買えるのだ。


という記述がある。

これは本当かなと思っていたのだが、どうやら本当らしい。アメリカの産油資本がより高く売っているというのは、眉唾だと思うのだが、日本が他の国より安く手に入れているのは事実のようだ。藤和彦氏の「石油を読む」初版のp158にその記述があり、理由が書いてある。その理由を私なりの理解でまとめておく。

第一に重質油を利用できる国はそんなに多くなく、日本が利用できる国の筆頭だと言う事である。原油には、その成分によっていろいろな種類があり、まず重質油と軽質油に分けられる。重質油は軽質油より重く、精製していく時に灯油やガソリンの取れる量が軽質油より少い。世界のほとんどの国は車中心の社会なので軽質油が望ましい。アメリカはガソリンが石油需要の50%で日本の15%に比べると格段に大きい。

日本は自動車中心の社会というよりも鉄道中心の社会なのでガソリンの使用比率が少くとも間に合う。アメリカは石油の精製施設が環境保護の問題等あって少い。今でさえも不足気味なのに、重質油なんて処理していたらガソリンを作る量が全然足りなくなってしまう。だから、使えない。

中東重質油の代表であるドバイ産原油はアメリカの軽質油の代表であるWTIの原油よりずいぶん安くなっている。2004年の秋ごろには20ドル近く差があった。現在はと思って価格の差を見ようとしたら、下記のリンクを見るとそう単純でもないらしい。

WTI産原油と中東産原油価格。乖離縮小の背景を考える|Klug クルーク

しかし、まあ中国もアフリカ新規油田開発でも原油価格は高止まりの様相|Klug クルークによると軽質油が好みである。

短期的には問題があっても、重質油を買える日本は取引において優位に立っているのは変わりはない。

第二に長期契約を結んでいる点である。長期契約といっても、価格は市場レートに合わせて変動しているので量だけの契約だと思う。(「石油を読む」P101)中東産原油はコストが安く、大きな油田が多い。そうすると安定的に生産できるように長期契約を求めるのだろう。日本はその中東産の原油を買う事ができるので、長期契約を多くなる。世界の原油の取引は4割がスポットの契約なのに対して、日本が9割が長期契約と多いのはそのためである。(「石油を読む」P115)ただ、その分価格にサービスは当然あると思われる。

以上の事から、日本は世界で一番石油を安く買えているのである。

ついでに述べておくと、その結果、日本の原油輸入が中東産に集中してしまうのは当然の事といえよう。これは問題にされる事もあるが、中東産原油が手に入らなくとも日本はいざとなったら軽質油を買って余ったガソリンは輸出すればいいのだから集中している事自体に問題はない。中東産原油以外はスポットの契約中心である事、日本は石油精製設備が過剰である事から、可能なのである。

今回挙げた二つの本、増田悦佐氏の「高度経済成長は復活できる」と藤和彦氏の「石油を読む」はお勧めである。特に、「高度経済成長は復活できる」は、私にとって都市への人口集中は悪いことではない事を気づかせたという点で、まさに蒙を開いてくれた作品である。
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