異をとなえん |

「日本はなぜ旅客機をつくれないのか」

2007.09.12 Wed

16:32:33

前間孝則氏が執筆した「日本はなぜ旅客機をつくれないのか」を読んだ。感想を書いてみる。

まず、作品の内容は、日本の戦後の航空機開発の実態を紹介しつつ、なぜうまくいかなかったのかを考察したものである。著者は結論として、日本の航空機産業が発展しない原因を「航空機産業(防衛産業)の強さや弱さ、さらには発展するか否かは、自動車や電気、鉄鋼といった民需中心の産業とは性格が大きく異なっている。日本の航空機産業の半世紀に及ぶ歴史を振り返るとき、単に経済だけが、一流になっても、国際的に通用する政治力や政治家の力量、外交手腕や国際性、国防に関する国民の意識あ理解、国論の統一といった国の総合力や一貫した基本戦略などがともなわなければ、これを発展させることができないことを物語っている。」(p308)として、国家としての統一的な戦略がないことに求めている。

私は疑問に思う。本の中でカナダのボンバルディア社やブラジルのエンブラエル社の事が言及されている。ボンバルディア社やエンブラエル社は1990年代に100席以下の旅客機で成功したメーカーである。ボンバルディア社やエンブラエル社に国からのサポートがあったのだろうか。少なくとも本の中ではそのような事は述べられていない。ボンバルディア社の成功の原因は、ボンバルディア社社長は「起業家精神である」と言っているし、著者もそれを肯定しているように見える。(p322)また、エンブラエル社の発展も国営メーカーが1994年に民営化された後であり、国からのサポートは当然減少したことだろう。これらの成功から見るかぎりでは、民間旅客機の開発においては国家としての戦略など重要ではない。

私は、日本の航空機産業が成功しなかった原因は起業家精神が少なかった事と運が悪かった事だと思う。本を読む前は、単に起業家精神を持った人間がいなかったと結論づけていたが、三菱のMUシリーズの開発事例を読むと少くとも勝負した人間はいたのだ。それが失敗したのは、その時点での力と運だろう。会社としての総合的な力、販売力や先を見る目さえあれば、もう少しなんとかなった気もするし、アメリカの不況や規制強化がなければといった気もする。しかし、結局はダメだった。でも、勝負した人間はいた。これは後につながると思うのだ。

そう思う時、YS-11が赤字であっても継続していれば、日本の航空機産業も違ったという話に疑問を感じる。誰一人として責任を取ろうとしない体制の開発に未来があるわけがない。続けたとしても、赤字を山ほどこさえているのが落ちだろう。解散してよかった。

私の意見と著者の考えは大きく離れているが、著者が航空機産業のノンフィクションを書いてくれたおかげで意見が持てた。非常に参考になる。今後、C-X、P-Xのノンフィクションを書いてほしい。著者は2002年時点でP-X、C-Xの開発に批判的だ。共同開発といっても無理矢理くっつけた感じで、うまくいきそうにない。私も素人目にそう思っていた。しかし、2007年現在、この時点ではうまくいっている。開発は順調だし、一機あたりの金額も高くない。アメリカやヨーロッパの輸送機や対潜哨戒機の開発が難航しているため、もしかすると他の国より安くなりそうである。製造機数がずっと少ない事を考えると、すごいことだ。C-Xの民間転用機の輸出もありそうな話になっている。川崎重工の誰かがリーダーとなって、共同開発案を考えたと思うのだが、この人の力量に感服し、開発の話を知りたい。著者はこういう分野のノンフィクションでは第一人者なので、大いに期待している。
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