異をとなえん |

オバマ大統領への願い

2013.01.24 Thu

21:28:20

「かんべえの不規則発言2013年1月23日」の記事を読んで、アメリカ大統領は難しい道だということを再認識した。

引用開始

○2009年のオバマは、彼自身がまだ「出来上がって」いなかったこともあって、目指している方向は必ずしも明らかではなかった。だからこそ、中道を目指す政治家という印象があり、「彼ならばアメリカの再統合ができるんじゃないか」と期待した人が多かった。ところが4年間大統領をやってみたら、彼はごく普通の、そして演説だけは相変わらず上手な、リベラル派の大統領になってしまった。つまらんなあ、というのが正直な感想です。
引用終了

この意見に同感する。
オバマ大統領が最初に当選したときは、民主党と共和党の垣根を越えて国民統合の大統領を目指すように見えた。
しかし、今はリベラル派の大統領として、片一方の旗頭になっている。

アメリカの問題は国家として分裂しかかっていることだ。
経済格差は大きく開き、富める者と貧しい者が互いにののしりあっている。
民主党と共和党の差は文化、生活様式の違いにまで拡大している。
メキシコからの移民の流入はスペイン語圏の拡大を促し、言語圏の統一さえ危うい。

アメリカ大統領は国家の再統合化を促すことを第一の目標にしなくてはならない。
リーマンショック以来の金融危機はアメリカを深く傷つけている。
傷を癒すにはどうしたらいいか。
とにかくじっとして、体を休めることだ。
アメリカも目立った行動をせずに、じっとしていることが一番いい。
だから、オバマ大統領のイラクとアフガニスタンからの撤退は正しかった。

問題なのは国内の政策だ。
オバマケアは国民を一体化させるために必要な政策だったと思う。
しかし国民の大多数の支持がなくては、オバマケアも亀裂を深める政策になってしまう。
国民の過半数の支持がない現状では強行する必要があったか。

予算の削減にしても同じだ。
福祉予算を削るか、それ以外を削るかで、民主党と共和党の対立が深まっている。
オバマ大統領は民主党のリーダーとして振舞っている。
これが問題なのだ。
民主党と共和党で争わせて、オバマ大統領はその一段上から仲裁者の立場に立って予算案成立を図るべきではないのか。
現状では党派間の亀裂を深めているようにしか見えない。

私がアメリカ大統領だったら、どうするだろうかを考える。
先送りと妥協案でとにかく対立を封じ込める。
それが正しい政策だ。

政治家は選挙に勝つために、リーダーシップを強調することも必要だ。
評論家のような立場ではいられない。
現在オバマ大統領は再選を果たすことによって、もはや選挙を気にする必要がない。
それなのに、国家を統合するより、むしろアメリカを引き裂く方向に進んでいるのが、疑問を感じる。

リベラル的な政策で国民を統合するのが、むしろアメリカにとっては望ましいという考えなのかもしれない。
ルーズベルト大統領はニューディール政策によって大恐慌によるアメリカの傷を癒した。
それを再現しようというわけだ。
ただ、ニューディール政策のときの、とにかく国民がまとまろうとする機運はない。
この状況では政策を実行するよりも、じっと我慢している方がいいのではないか。

アメリカには世界のリーダー国として、まだ力を保っていて欲しい。
アメリカが分裂したら世界も大混乱に陥ってしまう。
オバマ大統領はアメリカを分裂させないために全力を尽くして欲しいと願う。
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オバマ再選は大恐慌の前兆だろうか? - アメリカは財政の崖を落ちるのか?(その4)

2012.11.08 Thu

21:43:56

アメリカは財政の崖に落ちる危険性が高くなっている。
オバマ大統領の再選はむしろ危険性を高めている。

ケインズ政策の本質は前からも述べているように、共同体による失業者の救済だ。
国債が国内で消費されているならば、国民が失業者に対して援助をしていることになる。
失業者が後で働けるようになって、借金返済の役を果たせるならば問題はない。
そうならなくても、国民の間で同質性が高く、誰が失業者に援助したのかよくわからない場合も問題はないだろう。
問題は国内において貧富の格差が大きく、失業者が貧乏のままで国債を返却する場合に何の役割も果たせないときだ。
そうすると、国家の資産を所有している人たちに最終的には増税という形で負担が帰ってくる。
その時点で嫌だといっても、拒否できない。
ギリシャに見られるように、国家財政が破綻した場合強制的に取り立てられるのだ。
所得税を増やせなければ、本来ならもらうことができた年金を減らされるとか、資産に対して課税されるとかで実行される。
それが嫌なら、借金をして財政支出を増やすときに反対するしかない。

EUにおけるドイツとギリシャの関係が一番それに合っている。
ギリシャは借金を増やすことで少しでも国内の痛みを緩和しようとしている。
でもほとんど返す見込みがない。
だとしたら、その借金の負担を持つのは貸し手そのものだ。
ドイツ国民がギリシャ救済に対する反対姿勢を強めているが、当然のことだといえよう。
今反対しなければ反対するときはない。

それではアメリカの場合はどうだろうか。
アメリカは貧富の格差が拡大している。
国内の上位1%に金融資産の50%が集中しているというのが現実だ。
アメリカ経済の今後の成長がままならないとしたら、結局上位1%が負担を持つしかない。
上位1%は言い過ぎか。
たぶん上位10%で資産の80%ぐらいを持つだろうから、上位10%で負担を持つことになるだろう。
問題は彼ら上位10%が失業者に対して援助する連帯感を持てるかという話だ。
アメリカは明らかに分裂しつつある。
今回の選挙では、オバマ支持層とロムニー支持層の間ではっきりと人種が分かれている。
マイノリティはオバマに入れ、白人はロムニーに入れた。
人種の違いは所得の違いを示している。
貧乏人はオバマに入れ、金持ちはロムニーに入れたということだ。
つまりアメリカの白人は黒人やヒスパニックを援助したくない。
そういうことではないだろうか。
だとしたらケインズ政策は難しくなっていく。

オバマが勝ったほうが財政の崖に落ちる危険性が高くなるというのは、支出においてどちらの層を優遇するか異なってくるからだ。
先ほどのEUの場合で考えてみよう。
景気の悪化を防ぐために、財政支出の拡大が必要になった。
そこでEU全体で国債を増やして支出を拡大するのだが、メルケルが支出を差配したらドイツの公共投資を実行するだろう。
それに対してギリシャの首相が支出するのだったら、ギリシャで予算を使うことになる。
最終的な負担はドイツが取らなくてはならないとしても、それだったら国債で得た資金をどこで使うかは大きな問題となる
ドイツで使うのだったらドイツ国民は妥協できるかもしれない。
でもギリシャで使うのだったら我慢できない。
この場合経済効果自体は基本的に同じである。
ドイツで支出すればドイツにギリシャの輸出が伸びる形で資金が動き、経済を活性化させる。

アメリカの場合も同じだ。
ロムニーが大統領となれば、ケインズ政策によって上位10%に資金が流れる形で支出する可能性が強い。
オバマが大統領だと上位10%に資金が流れることに反対する可能性が強い。
実際オバマはブッシュ減税の延長で高所得者を適用外にしようとしている。
そうすると、そもそも上位10%はケインズ政策自体を拒否しようとするだろう。
だから、オバマと下院の対立によって財政の崖に突っ込む危険性が高くなってくる。
財政の崖に落ちれば世界経済は大恐慌の再来を迎えるかもしれない。

オバマ再選によってダウが大幅に下落したことは、その前兆にみえる。
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シェールガス革命のアメリカ経済への影響 - 続々:アメリカは財政の崖を落ちるのか?

2012.11.06 Tue

21:40:21

昨日の記事の続きで、シェールガス革命がアメリカ経済をどれほど成長させるか考えてみた。

まずアメリカのシェールガスの資産額を推定する。
11月4日の朝日新聞GLOBEのグラフによると、アメリカの技術的に回収可能な資源量は862Tcf(兆立方フィート)となっている。
出典は米エネルギー情報局 BP Statistical Review of World Energyだ。
GLOBEには天然ガスの価格の動きも出ているが、そこでは現在1000立方フィートあたり2.5ドルだ。
つまり、資産額は862兆立方フィート x 2.5ドル / 1000立方フィート = 2155(10億ドル)だ。
2兆1550億ドルになる。

ただ、推定資産額としてこのまま使っていいものか。
2.5ドルという市場価格は費用を考えると、生産者にはほとんど利益が出ていないらしい。
本当の資産額というのは、利益から換算すべきなのだから、利益0なら本当の資産額は0だ。
まあ実際は市場に供給されている天然ガスが多すぎるせいだと考えて、5ドルまで上がるとしよう。
2.5ドルが費用だから、2.5ドルが利益で結局は2兆1550億ドルが推定資産額になる。
アメリカはシェールガス革命によって、資産額が2兆1550億ドル増えたわけだ。

そうすると利回り年5%で回るして、年約1000億ドル分アメリカ経済の需要を押し上げる効果があるだろう。
これは普通なら、物凄く大きな需要喚起効果だろうが、現在1兆ドルを越える財政赤字で需要を支えていることを考えると、不十分だと言わざるを得ない。
効果自体についてはおおざっぱな推定値なので、計算の仕方によってはいろいろぶれるだろうけれど、今のアメリカ経済の需要不足の金額を考慮すると、少なすぎる。

結局、シェールガス革命だけではアメリカ経済を上向かせる効果はないというのが結論だ。
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続:アメリカは財政の崖を落ちるのか?

2012.11.05 Mon

21:28:07

前回の記事では、アメリカの経常赤字が続いていることを構造的な不景気の理由とした。
永久に経常赤字を続けることはできないから、それを解消できない状況が続いていることこそが不景気を生んでいるという理屈だ。
しかし、この理屈自体は間違っていることに気がついた。
シェールガスによってアメリカの資源の価値は増大した。
だとしたらその分資産は増えているのだから、当然借金できる限度額自体も増加したはずだ。
アメリカの増えていく借金の金額がアメリカの増えていく資産の金額より少ないならば、別に特に問題はないことになる。
もちろん本当に問題がないかは、金額を計って比較するしかない。
ただ、単純に経常赤字が続いているのに、資産が増えていそうもないから構造的不景気だという理屈がおかしいというだけだ。

やはり真面目にシェールガスの影響について考えよう。
おおざっぱな形でいいから、どれくらいアメリカの成長率を押し上げる力を持っているかを知りたい。
少し検索していくつか参考になりそうな記事を見つけたので、リンクしておく。

「北米シェールガス・シェールオイルの動向と我が国への影響調査」要旨(pdfファイル)

シェールガス

領土問題の背景にもあるエネルギー争奪戦の新星!
米国発の「シェールガス革命」は日本の関連銘柄にもビッグチャンスだ!


次はどれくらいの影響を持つ可能性があるのか概算してみたい。
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アメリカの将来が心配でならない

2012.09.04 Tue

21:21:39

オバマが大統領になったとき前途はよくわからないが、党派対立をやめて国として団結しようという、オバマ政権の方向性は正しいと思っていた。
アメリカが人種的な問題や格差の広がりなどで、一つの国としてのまとまりを失いつつあるように見えたからだ。
しかし、大統領になってからオバマはむしろ対立を深める政策を取るようになっていった。
オバマケアはオバマ政権最大の成果だろうけれど、二つに分かれた党派は激しく対立している。
国民の間でそれなりの支持を得ているのならばいいのだけど、世論調査ではオバマケアに対してむしろ批判している。
50%以上がオバマケアに対して反対なのだ。
国としてのまとまりを手に入れるために国民全体の医療保険を作るというのは正しいと思うのだが、国民の支持がほとんど得られないならばかえって悪い状況だ。

対立が深ければとにかく傷をいやすために何もせずじっとしていることが必要だ。
病気に必要なのは体の安静だからだ。
アメリカの政治もとにかく何もしないで寝ていた方がいいと個人的には思う。

オバマはそれに対して全然別の方向に動きつつある。
党派対立をあおり自分の勢力を固めることによって選挙に勝とうという方向だ。
選挙に勝つためには、中立であいまいな方向は嫌われる。
何もしない指導者は受けが悪い。
そして共和党もオバマにあおられるかのように、茶会運動に端を発する小さい政府指向の活動に走っていった。
「オバマさんの成功体験に支配される共和党」の記事でそんなことを思い出している。

「小さな政府」をスローガンにした活動が強く出ているというのは、原初的なアメリカの根本理念が脅かされていることを示している。
「小さな政府」はアメリカの建国当初の理念であり、当然のこととしてきたはずだ。
それを脅かされているとアメリカの中枢的な市民が考え始めているというのは、対立が根源的になりつつあるからだ。
ルーズベルトのときも社会主義的だと政府を批判する人たちは多かった。
けれどもアメリカ国民全ての生活が苦しくなっていることと、アメリカ自体の一体性があったことで対立を止めることができた。
現在のアメリカにはその一体性がない。
赤字財政を白人富裕層から金を取って、黒人やヒスパニックに分配する政策と考えている人たちが多くなっていると思う。
「財政の崖」の危険性も、最後には妥協するだろうとみんな信じているが、本当に妥協できるだろうか。
ひょうたんから駒ではないが、妥協できず本当に予算が削減されることもありそうな状態だ。

アメリカの政治はより混迷を深める状況に陥りそうな気がしてならない。
アメリカの分裂は世界を指導する国がいなくなることであり、世界秩序自体が崩壊する危険を招きかねない。
未来の不確定要素がまた増えることであり、日本の安全保障で頼れる国がいなくなることだ。
日本が独自に安全保障政策を考える必要がでてくるとは頭の痛いことだ。
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アメリカのケインズ政策は永久には続けられない

2012.07.09 Mon

21:09:33

アメリカの景気は思っているよりもいい。
前にも書いたように、巨額な財政赤字の需要拡大効果が大きい。
しかし、なぜアメリカは無限とも思えるような赤字を続けることができるのだろうか。
経常収支黒字国がその黒字の範囲内で財政赤字を出すならば、資金をまかなうことはできる。
けれどもアメリカは経常収支赤字国だから、単純に考えるならば資金の返済を不安視して、外国から金は入ってこなくなるはずだ。
普通の答えはドルが基軸通貨だからだが、基軸通貨だとなぜ金が入ってくるのだ。
需要が少なくなれば、基軸通貨であろうがなかろうが、価格は下がる。
実際ドルの価値はずっと下がり続けている。
そして、資金の流入のみがドルの価値を支え続けているのであれば、一時的に流入が止まればドル価格は下落し、それはさらなる流入の現象を生んで、下落スパイラルに入っていく。
だがドルは無限に下落はしていない。

ドル価値が無限に下落していないのは、基軸通貨国としての貨幣需要だ。
一番単純な需要は世界各国の貿易がドル建てになっていることの輸出金融需要だ。
貿易する場合、輸出する企業は荷物を船積みした時点で銀行から代金を受け取る。
銀行はその荷を輸入する企業が受領した時点でその金を取り戻す。
当然のことながら、その二つの代金には差があり、それが銀行の儲けとなる。
その金額はドル建てである以上、銀行はその金額分ドル資金を保有していなければならない。
つまり、アメリカに対して銀行はその分貸しをしていることになる。
貿易が拡大し続けるならば、金額も増大し続ける。
アメリカが経常収支の赤字を続けることができるのは、まさにその分の金額だ。
他の需要として、各国政府の外貨準備とか、ドルの闇資金とかもあるけれど、それらも含めて世界全体が成長することによって生じる需要がドルの需要になっている。
金融危機前までは、それでうまく回っていた。

金融危機後、アメリカは財政赤字を大量に出しながら、アメリカ経済を成長軌道に戻している。
世界経済全体が需要不足に陥りつつあるので、資金は余っているから、アメリカ国債は金利が下がり、幾らでも政府支出を拡大できる。
その金が回りまわって輸入を増やしている。
しかし、本当にこれでうまくいくのだろうか。
ケインズ政策が成功するのは、それによって得た成長を、国が享受できることだ。
世界経済全体をアメリカの財政支出が支えたとしても、その負担をアメリカだけがかぶるなら最終的に破綻するだろう。
世界全体の成長をアメリカが利益として取れなければ、システムは維持できない。

日本の場合のケインズ政策は日本が最終的に成長したとしたら、巨額の財政赤字をそれによって埋めることができる。
でもアメリカの場合、巨額の財政赤字が全て輸入に回るとしたら、GDPは成長しない。
世界全体では成長したとしても、それがアメリカ以外の成長に回るとしたら、最終的な財政赤字の負担は耐え難いものとなるだろう。

ユーロ圏と似た感じもある。
ユーロ圏では巨額の財政赤字を作って、需要を増大させたとしても、その財政赤字を返済できるかはっきりしない。
だから、財政政策を発動できなくなっている。
ケインズ政策を発動したとしても、最終的な負担先が確定していないといえる。

アメリカの場合はドルという通貨の発行権をアメリカが握っている以上、ケインズ政策の発動自体には問題がない。
けれども不況から抜け出し、通常の成長軌道に戻ったとき、極端な低金利の資金は調達できなくなる。
当然のことながら、上昇した金利分も含めて返済しなければいけないが、その負担はアメリカ国民にかかる。
アメリカという国がケインズ政策によって成長しているならば問題はないが、成長分が新興国に移転しているならばアメリカは国債の返済が負担になるだろう。

生産力が上昇していないのに、借金の返済を求められるならば、生活費を削るしかない。
今のギリシャと同じだ。
アメリカはギリシャと同じように、国債でGDPの10%近い金額を外国から呼び込み、その資金で輸入する物資を買って生活している。
借金が巨額である以上返済は塗炭の苦しみだろう。
石油危機後のアメリカ経済はこの状況に近かった。
金融引き締め政策によって

アメリカのもう一つの道はインフレによる返済だ。
今回はこちらになる可能性も十分ある。
ただ、インフレがあからさまになれば諸外国はアメリカに資金を投入しなくなる。
ドルの基軸通貨の地位も危なくなるだろう。

世界全体の成長がドル需要を生み出していた。
逆に言うと世界経済が成長しなければ、ドル需要は増えない。
減少する危険性だってある。
ドル需要が減少するというのは、アメリカに資金が入らなくなることだ。
それは経済に変調をもたらす。

今世界経済は少しおかしくなっている。
ユーロ圏と中国が成長軌道からはずれつつある。
アメリカの成長が世界経済の成長に連動しているならば、いずれその影響は出てくるだろう。
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再び大恐慌はありうるか? - ギリシャ危機の本質(その4)

2012.06.19 Tue

21:07:33

スペインの国債利回りが上がり続けている。
スペインのEUに対する援助要請も時間の問題だろう。
このまま世界は再び大恐慌に突入してしまうのだろうか。

リーマンショックによって世界経済は一つの限界に達し、資産価格の下落を止められなくなった。
発端はアメリカのサブプライムローンだったが、成長の限界を意識することによって、将来の期待が剥げ落ち、資産価格は暴落していった。
いったんは各国政府の財政支出の拡大によって、経済活動の崩壊は妨げられたが、経常収支の赤字国では長期間持たない。
その結果弱い部分である、アイルランド、ギリシャ、ポルトガル等が破綻し、今スペインにたどりついている。
このまま世界恐慌が再来するのだろうか。

大恐慌が世界全体に波及していった理由を考えると、世界全体の需要が急落することによって、供給が大幅に余剰になったのに、ついにそれをカバーする国が生まれなかったのが最大の原因だ。
世界全体で不足した需要をカバーできる国はたぶんアメリカ以外いなかったにもかかわらず、アメリカは資本の供給をやめ、保護貿易に走り、世界の経済活動のシステムを致命的に破壊した。
それがどうしようもなく弱小国を追い詰めていった。
もっともアメリカが救済に走るというのは、アメリカ政府が借金をして弱小国の商品を買い取ることを意味する。
国内の労働者の救済のことを考えるとそれは容易なことではなかったのは確かだ。

現在世界経済は同じように世界恐慌のがけっぷちに立たされている。
需要の剥落分を政府支出によってカバーできなければ、ある意味世界恐慌は必死だ。
それだけの支出ができる国はアメリカ、ドイツ、中国、日本の四カ国しかないが、ドイツ、中国、日本が財政支出を拡大するのは難しい。
消失した需要を補うことはできても、それ以上に需要を作り出そうとするのは、困難を極める。
借金の拡大に本能的に恐怖心を抱いてしまうからだ。
そうすると、一番大事なのは世界に需要を提供してきたアメリカがその需要を維持し続けることだ。

アメリカはリーマンショック後の混乱によって大幅な経済活動の後退を起こしたが、財政支出の拡大、金利の引き下げによって、経済は立て直されている。
その結果GDPは成長し、急減していた経常収支の赤字もだいぶ戻してきている。
アメリカはこのまま前の状態に復帰して、世界経済を支えていけるのだろうか。

しかし、それは簡単ではない。
まず金利の引き下げによる経済成長促進の効果は既につきている。
借金を低金利のものに振り替えた企業の利益増大はもう期待できない。
金利低下での投資の拡大も、投資先がなくなりつつある。
ドル圏は世界全体を覆っているので、世界が成長していれば投資先はある。
ドルにヘッジしている国には、低金利でドルを調達して、そこに投資すればそれだけで儲かる。
実際アメリカが低金利政策を開始したときは、世界に資金が投資され、ドル安になることも含めて、アメリカは利益を上げることができた。
けれども世界はアメリカの資金を受け入れることができなくなりつつある。
大量に投下されたドル資金は資産価格を上昇させ一時の好況を招いたが、たちまちのうちに限界に陥った。
アメリカの持つドル資金は大きく、世界の受け入れる能力に限度があるのだ。
ユーロ圏の危機や中国のバブル崩壊も含めて、今やアメリカに資金が戻りつつある。
それはドル高を意味して、海外への投資もままならない状況だ。

そこでアメリカ経済を支えるのは財政支出となる。
しかしこれも難しい問題を抱えようとしている。
通貨がドル高に向かいつつあることで、財政支出の拡大自体に困難はない。
デフレ、低金利はアメリカ政府に国債を自由に発行できる力を与えている。
でも世界が不景気に陥り、ドル高の状況で政府支出を維持することは、アメリカの輸入金額を拡大させる。
なんとしてでもアメリカ市場を確保しようと、世界各国はアメリカに輸出攻勢をかけるだろうし、不況やドル高は各国の輸出競争力を拡大させる。
そうなると、アメリカは輸入がどんどん増えるのに、輸出は増えない。
雇用は全然拡大しなくなる。
今でも失業率は8%を超えているのに、減るどころか、逆に拡大する危険性がある。
財政赤字は増えているのに、失業率は下がらない。
これはつらい。

保護貿易主義の誘惑は強まっていく。
保守派にとって、財政赤字を維持し続けることは、アメリカの犠牲によって世界を支える行為と移ることだろう。
いや実際そうなのだ。
将来ドルが逆流したときのことを考えると、財政赤字を維持し続けることはアメリカにとって自傷行為に近い。

結局アメリカの行動が大恐慌になるかどうかを決める気がする。
保護貿易に走れば大恐慌だ。
保護貿易はせず、財政赤字の縮小も急がなければ、世界の経済活動は維持できると思う。
私の予想はこれなのだが、本当にどうなるかは難しい。
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