異をとなえん |

国債が暴落すると自国通貨高になる

2012.11.10 Sat

21:46:30

「国債暴落説について考える - 為替レートはどう決まるのか?(その7)」で次のようなコメントをいただいた。

引用開始

国債暴落で円安になる理由は、通貨の信任が無くなるから
国債が暴落して、自国通貨高になった国など、古今東西何処にもない
引用終了

ちょっと納得しがたいので反論してみた。

まず、国債の暴落が起こった場合の為替相場の例を見てみよう。
「過去の日本の債券相場の暴落事例 その2」を見てみると、運用部ショックとVARショックの二つの例が挙げられている。
小沢ショックは実際には国債価格は変動しいないみたいなので外した。
前の記事にあるもっと古い例は為替チャートを見つけるのが面倒だったのでこちらも外している。

運用部ショックでは、1998年「9月に0.7%を割り込んでいた長期金利は12月30日には2%台に乗せてきたのである」とあるように、1%以上金利が上昇した(国債価格は下落した)。
それに対して、1998年のドル円レートの為替チャートを見ると、円は9月144円ぐらいだったのが年末には115円まで円高になっている。

VARショックでは6月に国債は高値をつけた後、暴落した。
引用開始

6月までは債券相場は1日あたりの値幅も限られながらも、じりじりと高値を更新し続け11日に30年債が0.960%、20年債0.745%、そして10年債0.430%とそれぞれ過去最低利回りを記録した。
引用終了
長期金利は6月に0.4%だったのが8月に1.4%まで上昇している。
それに対して、2003年のドル円レートの為替チャートを見ると、円は6月119円ぐらいだったのが年末107円まで円高になっている。

上記の例を見るとわかるように、1%以上金利が上昇した場合為替相場は円高に向かっている。
これは円とドルの金利差が小さくなると、日本からアメリカに資金が移動しづらくなるので円高に向かうという理屈に合っている。

もちろん国債の暴落と言ったら金利の1%ぐらいの上昇ではなくて、金利の5%ぐらいの上昇という主張なのかもしれない。
ただそれほどの上昇は簡単には起こらない。
1%ぐらいの上昇でも、自国通貨高に向かう力は働くし、自国通貨高に働く力は同時に国債を購入する力だ。
資金が日本に流入すれば、あるいは外国に資金が流出する力が抑えられれば、その資金を運用するために国債を買おうとする。
国債を買おうとすれば当然国債は上昇方向に動く。
国債暴落が国債価格上昇の力を生み出したわけだ。
ゴムを引っ張れば戻る力が働く。
それをさらに引っ張っればゴムは切れて戻らなくなるけれど、そのためには継続的に強く力を加えなくてはならない。
国債暴落の力は自国通貨高という反発する力を生む。
それが通貨の信任を失う方向に動くには、国債の暴落と関係ない力が働かなければならない。
それほどの力が現在の日本に働く理由が見つからない。

戦後の日本では、国債の暴落と自国通貨安が同時に発生した。
これは当然相反する現象だけれど、同時に起こったのは急激なインフレが起こったからだ。
そして、急激なインフレが起こったのは戦災によって膨大な資産と生産能力を失ったからだ。
需要に比べて供給が全然足りなくなったので、インフレが発生し日本人は貧しくなったわけだ。

現在の世界でも自国通貨建てでなく、外国通貨建てで国債を発行していると、そもそもデフォルトリスクが発生する。
この国は金を返せないと判断すれば国債は暴落し、同時に自国通貨を大量に外国通貨に変換しようとする力が働くから、為替相場も下落する。
そういうケースと自国通貨建てで国債を発行しているケースは違うということだ。
そもそも外国通貨建てで国債を発行しなくていけないのは、自国の資本市場で資金を賄うことができないから外国に頼るからだ。
国が成熟して資金がたまれば外国の資金に頼らずに済む。
そういう自国通貨建てで国債を発行している国では、国債の価格が下がって自国通貨安になることが起こらない。
つまり国債暴落と認識されること事態が発生しないのだ。

だから、「(自国通貨建て)国債が暴落して、自国通貨安になった国など、古今東西何処にもない」とは言えないけれど、めったにない。

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国債バブルという表現はおかしい

2012.06.25 Mon

20:40:08

国債がバブルと化している、という意見がある。
この意見には違和感を感じて仕方がない。
一番変だと感じるのは、国債には上限があるのにバブルとすることだ。
国債は債券だから、受け取る利息と償還金を合わせた合計金額より高い値がつくことはありえない。

たとえば、年ごとの利息が5円で償還時に100円が戻ってくる10年国債を考えよう。
そうすると利息の合計は5x10で50円、償還金と合計して、150円が上限だ。
150円以上で買うのは、戻ってくる金額が少なくなって損になってしまう。
現金で持っていた方がいいという話だ。
もっとも現金は危険だから、安全に保管するための保管料としてマイナス金利を許容して投資することもある。
実際ドイツ国債はマイナス金利になっていて、少し異常だ。
そういう変な場合も少しはあるかもしれないけど、受け取る金額を越える価格で売買されることは普通ありえない。

そうすると、国債がバブル化しているといっても、上昇余地はほとんどない。
10年国債は今143円だけど、それだったら最高に上がったって7円だ。
上昇を期待しての買いは非常に少ない。
儲かっても5%という投資がバブルと言えるのだろう。
今の状況では投資した金額が減らないならば、それで満足だという投資がほとんどだろう。
ユーロの国債危機で米日英独の国債が買われているわけだが、とにかく安全なところへの避難としての目的がほとんどだと思う。
どんどん上がっていかなければ、バブルとはいえないのではないだろうか。

ただ、バブルの本質はこれと似ている感じもする。
そもそもバブルの発端は、儲かる投資がなくなって元本の安全だけを求めた投資の開始だ、と考えている。
バブルの対象が土地になるのは、何よりも下がることがないだろうという安心感だ。
投資するところがなくなった資金が、安全第一を目指して購入したのが、土地であり、みんながそう考えることで土地の価格は上昇していく。
土地の価格にははっきりした上限がないから、みんなが買えばいくらでも上昇できて、バブルになっていく。
リーマンショック後の金や原油などの購入も同じ印象だ。
ただ、最近では金や原油の価格が下落に転じているように、どんなに安定資産であっても上昇すれば下落する危険性は出てくる。
原油はそもそも消費される商品である以上、経済の活動の変化を反映せざるを得ない。
金は商品とはあまりいえず、むしろ元祖通貨だ。
経済活動はあまり重視されないかもしれないが、上限はない。
だから上がりすぎれば下がる危険性が出てくる。

国債が上がりすぎることはない。
だから暴落する危険性はほとんどないと言える。
経済活動を反映したゆっくりした下落はあるかもしれない。
でも暴落の危険性は少ない。
Varショックによる下落だって金利差で1%ぐらいだ。
バブルの崩壊と次元が違う。

安全を求めた投資と価格が幾らでも上昇するという夢を抱いた投資とは、やはり違う。
バブル特有の高揚感が全然ないのに、国債投資をバブルというのは、どうも違和感を感じて仕方がない。
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カイル・バス氏の日本国債暴落予測の推移

2012.05.28 Mon

20:16:02

土曜日だったかな。
カイル・バス氏がNHKの番組で日本国債は2年以内に暴落すると言っていた。
前は1年とか言ってなかったかと思ったので、調べてみた。

2010年10月13日
カイル・バス氏「2−3年以内に破たんを来す恐れ」

2011年3月9日
カイル・バス氏「史上最大の国債暴落」Xデーが起きる

2011年12月02日
カイル・バス氏「数ヶ月以内に日本崩壊」

2011年12月27日
カイル・バス氏「12ヵ月以内に日本が倒産する」

2012年01月29日
カイル・バス氏「日本は18カ月以内に崩壊する」

2012年05月23日
カイル・バス氏「日本国債は2年以内に暴落する」

この結果を見る限りでは、着実に日本国債の暴落時期は伸びている。
一安心という所か。
もちろん、カイル・バス氏の予言の本質は日本国債がいつかは暴落するということで、それは確かに正しいはずである。
私だって、いつかは景気が良くなって日本国債の金利は上昇するとは思っている。
それが暴落というほど激しくなるかどうかはわからないけど。
だから、重要なのは時期なのだが、それが最近になって後延ばしされている。
つまり、日本国債がすぐ下がることには懐疑的になっているのだろう。

実際、日本国債の金利自体は最近ユーロ危機もあって0.815%と9年振りの水準まで下がっている。
もっとも1%を割るのは流石に下げすぎみたいで、前のときは急激に上昇して終了した。
今回も危機が一段落した所で、一気に上げて終わるのではないか。
そういう素人予想ができるのに、買っているところがあるのは驚きだ。
2年物ぐらいが買われるのはまだわかるのだが、10年物はもう反転してもいいのにと思う。
物価だって上昇基調にあるのに。

物価の上昇基調は怪しいか。
いろいろとプラスになりつつあるが、外国の石油価格の上昇の影響が大きい気がする。
世界全体が恐慌になれば、石油価格も暴落するだろう。
それを考えると、物価の上昇も定着したとはいえない。
結局は前途不明なんだな。

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国債の金利上昇を心配する必要はない

2012.02.25 Sat

20:43:57

国債の金利上昇を心配する人がいる。
金利水準1%の上昇で銀行債券6兆円の損失
本質的に金利上昇は銀行にとって得な話だということを説明してみたい。

まず、債券市場の金利の決まり方について説明する。

普通の債券では償還されない可能性が高ければ高いほど、金利は高くなる。
償還されない可能性は格付け会社の格付けによって判断することができるので、格付けが高いほど金利は低く、格付けが低いほど金利が高い、そういう債券市場ができあがる。

自国通貨建ての国債はデフォルトの可能性0で、どこの国の債券市場もできている。
それ以外の債券は、国債の金利に対して何パーセントが上乗せする形で決まる。
上乗せする金利は普通格付け会社の格付けで決まるわけだ。

それでは、国債の金利はどう決まるのだろうか。
厳密には相互作用があって決まるのだろうけれども、まず国債以外の債券や銀行融資によって投資する金額が定まる。
そして貯蓄から投資を引いた残りの資金は、とにかく国債を買ってしまう。
そこで決まるのが国債の金利だ。
余った金額を残しておいたら金利はつかないから、他に運用する先がない場合金利は幾らでも下がっていく。
それが今の日本の国債市場だ。
上の話は理論で書いているので、国債を買わないと金利はつかないと言ったが、現在日本では日銀に預けておけば、たしか年利0.1%の金利は保証されている。
だから国債の金利はこれよりは高くなる。

この理屈がわかると、国債の金利の上昇する危険性、国債の価格が暴落することで銀行などが巨大な損失を出すという話の馬鹿さ加減がわかる。

国債の金利が上がるというのは、金融機関はそれよりも高い金利で貸し出しができていることを示している。
つまり景気が良くなって企業が積極的に投資をしているから、企業への貸し出し金利が上昇するのだ。
そして残った金で国債を買うわけだけれど、購入する金額が少なくなれば当然国債の価格は下落する、つまり金利は上昇することになる。
ただ、ここらへんは実際には複雑な相互作用である。
政府は国債の繰替えや確定している支出のために国債を発行するのだから、調達する金額は決まっている。
だから、金融機関が残った金額で国債を買うといっても、政府が調達しなければならない金額を下回ったら、それでは困ってしまう。
その場合、国債の金利が上昇することで、その他の金利も上昇し、そんなに高くては採算に乗らないと企業が借金をあきらめることで、国債を買うための資金が生まれるのだ。

要するに国債の金利が上がるということは、その他の金融商品の金利も上がることだから、基本的には金融機関にとって得なのだ。
金利上昇局面での資金繰りの問題はあるけれど、基本的に得ならば銀行の損といってもたいした問題にはならない。

銀行は市場の時価という形で自分の資産を把握していない。
1兆は金利2%で貸す、1兆は金利1%で貸す(国債とする)、こんな形で認識している。
国債の価格が下がったとしても、金利1%で貸していることに変わりはない。
ここで国債を売って損を出したとしても実行するのは、それ以上に儲かる金利で貸し出しができるときだけだ。
とにかく、銀行にとって得なことに変わりはない。

いろいろ工夫してみたけど、どうもうまく説明できている感じがしない。
また、後で挑戦してみよう。

わかりにくい所がありましたら、質問をよろしく。
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国債暴落説について考える - 為替レートはどう決まるのか?(その7)

2011.06.11 Sat

05:59:59

国債暴落説というのが、いろいろと出回っている。
私には疑問なのだが、それについての反論をまた書いてみた。

まず国債暴落説とは、日本の国債があまりにも巨額になってきたために所有者が不安を感じ国債を売ると、そのタイミングが一致するときには大幅に価格が下がり、価格が下がること自体が原因となって処分売りがかさみ下げが止まらなくなるような事象が起こるという説である。
国債暴落自体はあってもおかしくない。
国債所持の不安から起こるというのはどうも疑わしいが、少くとも日本の景気が回復して資金が投資に向けられるようになれば、デフレと不景気を前提とした現在の国債の価格が崩壊してもおかしくはない。
おかしいのは、国債暴落と円安が同時にくるような意見で、ここらへんから私にはまゆつばに見えてくる。

単純に考えれば国債暴落は円高である。
国債が暴落するということは、金利が上昇することだから、日本の持つリスク資産から国債に資金が移動するはずである。
日本の持つ海外の資産で、国債よりリスクは高いのに利率が低い投資は回収して、国債に投資した方が得だからだ。
日本円で資金を調達している日本の銀行には、日本国債よりリスクが低い資産はないから、利率が高ければ回収する。
日本に資金が戻れば円高になるし、あるいは日本から外国への投資金額が低くなっても円高だ。

国債暴落で円安になるというのは日本の信用不安によって、資金が逃げ出していくからという話だ。
つまりデフォルトを起こさなくとも、ハイパーインフレで価値がなくなることが前提になっている。

国債が暴落したときに、均衡が成立しているならば、どのくらいのインフレを仮定するか計算してみよう。
たとえば、今アメリカ国債2年物が利率0.4%で、日本国債2年物が利率0.17%だ。
ここで日本国債が暴落して、利率が3%になったとしよう。
1億ドルを2年分投資する。
ドルだと1億80万ドルになる。
円に投資すると、1億ドル * 80(レート) = 80億円で、2年後には80億円 * 1.06(利率) = 84億8千万円となる。
そうすると、2年後のドル円レートが84億8千万 / 1億80万ドル = 84.12円/ドルより円安にならなければ儲かるわけだ。
たいしたことないと思ってはいけない。
償還するときのレートは貿易財の購買力平価のレートで見るのだった。
購買力平価について」で見たように、現在の購買力平価でのレートは65.12円である。
そうすると(84.12 - 65.12)/65.12 = 0.29で実に30%近いインフレが発生することを期待しているわけだ。
年率だと半分の15%で、この場合は複利で効いてくるから、もう少し小さくて、計算すると13.2%ぐらいだ。

13.2%のインフレは尋常じゃない。
これほどのインフレは需給のギャップがとても開いている必要がある。
現在の日本の需給ギャップというのは、供給が需要を上回っている。
それに対してインフレになるには、需要が供給を上回らなくてはならない。

石油ショックのときのインフレは、景気が良くて需要が非常に大きかった所に石油の値上げが襲って急上昇した。
現在の日本にこのような状況があるだろうか。

現在の日本でインフレが起こるには、需要の急増か、供給の急減かが必要だ。
需要の急増はとてつもない好景気を意味する。
国債暴落と円安には、石油ショック直前の高度成長が数年続いて、供給が追いつかない事態がいる。
絶対にないとは言わないが、これは喜ぶべきことだろう。
あるいは、供給の急減だ。
東日本大震災はまさしく供給の急減だったが、年で見ればたいしたことはない。
今年度の実質成長率はマイナスになるかならないかで、とても供給の急減とはいえなくなる。
つまり、国債暴落と円安を招くほどの供給の急減は戦争でも起こって、国内の工場が半年ぐらい操業できないとありえないのではないだろうか。

結論からすると、国債の暴落と円安は同時に起こらない。
だから国債暴落と円安で日本がとてつもない貧乏状態になるというのは、まゆつばものだ。

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購買力平価について - 為替レートはどう決まるのか?(その2)
量的緩和政策とQE2について - 為替レートはどう決まるのか?(その3)
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国債購入政策の功罪 - 為替レートはどう決まるのか?(その5)
続:国債購入政策の功罪 - 為替レートはどう決まるのか?(その6)
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日本の財政赤字とアメリカの不動産担保証券の買い取り

2010.01.12 Tue

20:05:27

正月ぼけがひどくて、ブログが書けないでいる。
書かないと、いつまでも書けないので、とにかく生きているだけでも発信しておこう。
まとまったことを書く力もないので、とりあえず頭に思い浮んだことだけ。

マーケットから見た「リフレ派」の誤謬 - よそ行きの妄想を読んで、国債が暴落するかについて考えてみた。

引用開始

政府が際限なく貨幣を増刷していけば、いずれマーケットは政府に対して不信感を持ちます。即ち、金融と物価の安定を放棄したのではとの不安です。これが一定以上蓄積したら、日本政府に対する信用が瓦解する瞬間が訪れます。そうは言っても国債の元本は必ず償還されるだろうとか、利払いが滞ることはないだろうとか、流動性がなくなることはないだろう、などといった安心感がすべて不安に変わります。それまでデフレがテーマだったマーケットが、一気にインフレムードに変わるわけです。
引用終了

財政赤字が続いて、市場がいつか返済できなくなるのではないかという怖れから国債市場が暴落するというのが一つの説である。
しかし、私には信じ難い。
政府は国債を返せなくなりそうだったら、日銀に直接引き受けさせてでも返却するというのが当然に思える。
日銀が引き受けるのは、更に信用をなくす行為だから、更に国債が売られるからダメといっても、日銀はいざとなったら全部買える。

主として日本の国債を買っているのは銀行である。
彼らは預金から国債に投資している。
国債を買っているのは、他に投資する先がないからだ。
日本以外の国に投資するのはどうだろうか。
アメリカの国債の利回りはずっといい。
実際にかなり買っていると思うが、全部を投資するということはない。
為替リスクがあるからだ。
どんなに利回りが良くとも、為替が極端に円高に振れたら、いきなり損を出してしまうだろう。
だから、日本国内で運用先を探すことになる。
国債は私にはどう考えても、信用リスクはゼロに見える。
銀行からすると預金との利息の差は確実に稼げるわけで、そこで国債は常に買われ金利は下がってきた。

この場合、注意したいのは日本の銀行にはインフレリスクはほとんどないことである。
円がインフレにより価値が目減りしたとしても、円で借りて円で運用している以上、利益は変わらない。
もちろん、ハイパーインフレが発生したならば、円で運用するのが損だと、日本で銀行預金をしている人たちも急激に預金を引出すかもしれない。
銀行は短期で集めた資金を長期で運用しているのだから、期間がマッチングしないリスクとも言える。
けれども、日本国民が急に預金を降ろすという事態がありうるだろうか。

小渕政権の頃が国債の金利が1%以上、急上昇したことがあった。
ある意味国債暴落である。
プロの間ではもちろん大問題だったと思うけど、一般の国民があまり気にしていたとは思えない。
私もその頃はあまり経済に興味がなかったので、気づかなかった。
つまり、国債の価格が下がったって、銀行預金を降ろす人はほとんどいない。
だとしたら、銀行の暴落リスクはほとんどないことになる。

ハイパーインフレが怖くなるためには、少くとも身近で物価が上がっていると感じる必要がある。
現在のデフレ状況では、到底考えられない。
そして、ある程度物価が上がった状況になれば、景気は大幅に好転しているはずだ。
実際、2006年ぐらいにインフレといった感じではないけれど、デフレが止まったという感じでも景気はいい感じであり、そして政府の財政収支は大幅に好転していた。
そもそも最初の国債が返せないという話はどこかに行ってしまう。

結局、国債の信用リスクは、ほとんどない。
それを考慮した思考はあり得ないことを仮定にした話だ。
そうすると、どういう場合に価格が下落するかというと、国債より有利な投資先がたくさんあるために、銀行が国債を買わなくなる時だけだ。
国債より有利な投資先がたくさんあるというのは、景気が回復した時だけで問題ではない。

では、どういう時に財政赤字が問題になるかというと、景気が好転しインフレ気味にも関わらず、支出をそのまま拡大し続けた場合だろう。
安倍政権が予算を組んでいた頃、景気は好転していた。
その時はかなり予算を押さえ気味にし、国債の発行残高もGNP比で縮小していた。
それなら、全然問題ない。

自国通貨建ての国債の発行で問題になるのは、インフレが発生しているにも関わらず、景気があまり良くないので、財政支出が削減できない場合に思える。
つまり、スタグフレーションが発生している場合だ。
これは本質的には、経済が供給力不足のために起こる。
この時は苦しくとも、財政支出を削って、我慢するしかない。
日本の場合はこの状況にはほど遠い。
貿易黒字が続いているということは、供給力が需要を上回っているからだ。
その場合スタグフレーションは起らない。
しかし、今後日本でも少子高齢化が進むことで、経常収支が赤字化してゆくことも考えられる。
その場合、財政が硬直化し、社会保障等の支出が継続的に増えてゆき、デフレが止まっても財政支出を減らすことができない状態がありうるかもしれない。
その時は増税することが必要になるだろうけれど、まだ先の話だ。

単なる金融政策では資源配分に影響を与えない。
日本のゼロ金利政策と量的緩和が、いつまでたっても景気を良くしなかったことが、その現れに思える。
リフレ政策というか、通貨の供給が意味を与えるのは、それをどこかで使うからだ。
単に金利を安くしただけでは、景気が悪ければ消費にも投資にも回らない。
今のアメリカの政策が成功しつつあるにように見えるのは、FRBが金利を安くするだけではなく、実際にリスクを取って投資をしているからだ。
不動産担保証券の買い取りは、いろいろと技術を駆使したとしても、本質的には住宅を買っているのと変わりはない。
FRBが住宅を買っているからこそ、住宅価格は底を打ち、景気は立ち直りつつあるのだ。
じゃあ、FRBの政策が正しいかと言うと私には全然そうは思えない。

日本の土地価格のことを考えてみよう。
日本の土地の場合も日銀が担保を買い取るなどと言う技を考えられたかもしれない。
けれども、日本の土地の価格が下がったのは、少くとも地方の場合は正しかった。
地方の商店街がシャッター通りと化し、人口が減少している以上、土地の需要がなくなるのは当然だ。
だから、土地価格が下落するのは当然と言える。
日銀が強引に価格を支えたとしても、それが利益を生まなければ、結局は単なる消費でしかない。
この場合、中央銀行と政府が一体と考えれば、政府が使わない土地をせっせと買っているに過ぎない。
政府がムダな土地を買っているということは、景気が良くなった時点での供給力不足を招くだろう。
つまり、スタグフレーション状態での引き締めであり、その時点で政策の失敗のつけを払わされる。

アメリカのFRBの政策に戻ろう。
アメリカのFRBによる不動産担保証券の買い取りは、結局は住宅の買い取りと同じだと述べた。
その政策は正しいのだろうか。
私にはアメリカの住宅価格の低下は、石油価格の上昇から来る必然に思える。
つまり、ガソリンの低価格を当然と見なして、アメリカ人は住宅の郊外化を進めてきた。
広い土地が取れるので大きな家を作り、通勤に楽なように大型乗用車に乗ってきた。
ガソリンが上昇すれば、そういう訳にはいかない。
ガソリンを節約するために、公共交通機関を使い、乗用車を小型に変える。
あるいは電気自動車などに変えるかもしれない。
電気自動車の航続距離がガソリン自動車よりも短いことを考えると、遠くに家を持つことはできない。
また、公共交通機関を使うということは、住む部分によって差異が生まれるということであり、都心から遠くに離れれば離れるほど、不利になる。
そのような条件を市場は考えに入れながら、住宅価格を決定する。
その中で、何も考えないで住宅を買っているFRBの政策は、ガソリン価格の上昇は偽りであり、今後は安くなることに賭けているだけだ。
その賭けにFRBが負けるとは必ずしも言えない。
けれども、そんな賭けをFRBにして欲しいとは、私がアメリカ国民だったら思わないだろう。
アメリカ国民の一つ一つの判断で価格が決まった方がいい。
そして、個人的にはガソリン価格は上昇するように思える。

そんな訳で、FRBによる不動産担保証券の買い取りは、日本の銀行が不動産価格の回復に期待して、いつまでも担保を抱えていたのと変わりない行動だ。
変わっているのは、中央銀行が破綻に追い込まれることはない位だ。
しかし、住宅価格が回復しなければ、その歪みはどこかで必ず現れる。
それはアメリカにとって、いいことだとは思えない。
とはいえ、市場における最も力を持った参加者が買いで勝負している以上、それに対して売りで立ち向うのはあまりにも危険である。
市場の流れに追随していくのが、賢い方法だろう。

なんか、いつも書いていることと同じだと思った方は私のリハビリだと考えて許してください。
長い文章は書けるようになったけれど、構成が無茶苦茶だ。
日本の財政赤字の問題が、途中でアメリカの金融政策の問題に変化している。
読み直すと、その他にもいろいろあらが見えてしまう。
本当はもっと推敲するべきなのだろうけど、それが大変だということが最近になってようやくわかった。
文章は少しずつしか、うまくならないと思う。
だから、今回はこの位であきらめる。
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国の財政の考え方

2009.07.29 Wed

21:26:55

国家財政について、国債を外国人が持っていることと自国人が持っていることの違いで、
あかさたなさんからコメントをいただいので考え方をまとめてみた。

引用開始

マスコミはなぜか国家財政を家計に例えたがるのでけど、むしろ企業に例えるべきなんですよ。

結局の所国債をして公共投資をするのは、企業の設備投資と一緒です。借金をして、工場を造って(減税や補助金やインフラ整備などをして)、それで売上(税収)を上げて、それでお金を返すわけです。

いまマスコミや財務省の人たちが言っていることは売上を伸ばすべき(景気をよくすべき)局面で、借金の額だけを見て「借金が多すぎる。設備投資を一切しないで、製品の価格を上げて借金だけを返せ」と言っているコンサルみたいなものだと思うのですよ。
引用終了

会計の本質は企業でも家計でも同じだと思う。
借金で支払う利息を、
その金で投資した結果の利益が上回っていれば問題はない。
家計は投資をあまりしないし、貯金の利子は借金の利子より低いから、
借金は返した方が得になる。
それに対して、企業は投資をして利益を上げるのが目的で、
普通の会社ならば借金の利子より多くを稼いでいるから、
借金の額はあまり問題ではない。

国の財政は少し違う。
基本的に国の仕事は投資活動ではない。
治安、法の運営執行など、全て必要だから実行している。
かかる金額も年ごとに大きく変わるわけではない。
だから、借金などせずに税金として毎年調達するのが望ましい。
国防も基本は同じだ。
戦争の脅威が少なければ、
毎年の金額はあまり変わらないのだから、税金でいい。
ただ、戦争が発生すると金額が急増する。
その場合、各年の平準化を計るために国債を発行してならすわけだ。
古典的な夜警国家観だと、ここまでが国の仕事だから、家計にものすごく近い。
借金はできるだけ早く返すほうが望ましいことになる。

とは言っても、
最近は国が社会保障やら経済の面倒まで見るのが普通になっている。
経済成長をできるだけ高めるのが望ましく、
公共事業もその一つの手段になった。
元々は国家にとっての必要性であり、住民の昔からの願いであったものが、
経済成長のための投資となるわけだ。
特に不況になると、金利は安くなり、
国家はその信用を使い一番低いレートで資金を調達できるので、
公共事業はより有利になる。
採算が取れなかった公共事業も実行できる。
そこで、公共事業をどんどん実行して、経済ががんがん成長させたい。
その場合、企業の会計のように、借金が増えても、
その分収入が増えれば問題はない。
けれども、なかなかそううまくいかない。
特に日本の場合、バブル崩壊以後、公共事業に膨大な投資をしたわけだが、
GNPはほとんど伸びていない。
公共事業によって需要ギャップを埋めたから、
GNPが減らなかったとも言えるが、
それでは成長への正の効果がほとんとないことになる。
だとしたら、それは投資ではなく、未来から借金をして、
単に現在消費しているだけに過ぎない。

国の財政を借金の額だけで見ていけないのは確かだ。
重要なのは、その借金に見合っただけの投資をしているかだ。
企業の会計だと、借金に見合った利益を生むだけの資産を持っているかだ。
借金に見合った利益を生むだけの資産を持っていなければ、
できるだけ今ある収入で借金を返した方がいいことになる。
もっとも、それでは返しきれないと言うのであれば、
更に借金をし、新たな投資先から儲けて返す、一か八かの勝負もある。
ただ、そういう場合は、損を出してきた経営者を更迭して、
新しい経営者の元で再建を目指すのだが。
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