異をとなえん |

キプロスの問題がなぜ民主主義の問題になるのかわからない

2013.03.22 Fri

21:58:56

「ヨーロッパの一級市民たちと二級市民たち」ではキプロスの問題が解決できない原因を、民主主義が国民のエゴイズムによって、正しい選択ができないからだとしている。
この理屈がわからない。

基本的な問題は簡単で、借りたお金は返しましょう、というただそれだけの話だ。
政治システムがどうであろうとも、その決定によって借金がなくなる理由はない。
借金は返さなければ永久にそのままだ。
民主主義国家だと国民の支持が得られないから、借金の返済のための負担を認めないというのは理屈に合っていない。
どんな国でも負担が増加するのは嫌だろう。
借金だって返済しなくて済むならば誰だって返済しない。
けれども借金を返済しないと、たいていもっと状況は悪くなる。
だから、借金を返すために必死になって努力する。
借金を返すのは当然の義務だということを、モラルとして国民に教えようとするわけだ。

国民が反対するから、議会が税金を増やすのは認めないというのはそれでいい。
問題は借金を返済するのと借金を踏み倒すのと、どちらがより負担が大きいかだ。
キプロスの場合今回の解決案を拒否すれば、間違いなく銀行は倒産する。
今回の預金に対して超過金をかけるといった法案の具体化によって、銀行が再開されれば全ての預金が一斉に引き出されるのは目に見えている。
だからECB(ヨーロッパ中央銀行)が銀行に対して流動性を供給しなければ、銀行は倒産必死と見て、預金の返済を認めず破綻処理をすることになるだろう。
そうなれば、税金として預金の10%前後が取られるより、さらに大きい負担を迫られることは必死に思える。
10%前後の超過金を払うことで、預金が戻ってくるならば、その方がいいに決まっている。

キプロスの議会は何か別の方法がないかと、預金への税金を拒否した。
しかし、今のところ代替案はなく行き詰っている。
銀行を閉鎖し続け、預金を封鎖できていれば、このままの状況を維持できるかもしれない。
しかし、それは金融システムが麻痺しているのと同じことだ。
遅かれ早かれ、銀行の活動を開始する必要がある。
そして究極の二者択一を迫られるわけだ。
たぶん、EUとキプロス政府との合意がなければ、銀行は破産申請を出さざるを得ない。
議会も全面カットよりは、10%減ですむ方がいいと理解して、たぶんギリギリで預金への税金法案は通る。

北欧圏の国々では、民主主義によって南欧の国々への援助を拒否している。
それはエゴイズムだと評されているけれど、むしろ自分たちの金を喜んで出す国がある方が不思議で仕方がない。
今回援助をしないのも当然だろう。
援助しないことで、その他の国も預金の取り付け騒ぎが起こる可能性があるかもしれない。
けれども、それはECBが援助してくれさえすれば対処できる。
ECBがキプロスと他の国との間で差別していることではない。
EUとの間できちんとした借金の返済計画ができるならば、一時的な借金は認めるそれだけだ。
しかし、きちんとした借金の返済計画がなければ、一時的な借金は踏み倒される危険が大きくなるので、キプロスには無制限の流動性は許可できない、それだけの話だ。
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キプロスで預金に課徴金をかける

2013.03.18 Mon

21:52:35

どうも調子が悪くて仕方がない。
先週は一本しか投稿できなかった。
記事を書かないでいると、ますます書けなくなってしまうので、とにかく意味のないことでも書いておく。

キプロスの金融危機に対して、EUは支援の条件として預金に課徴金をかけることを要求し、キプロスは受け入れた。
その余波が世界中を駆け巡っている。
EU内のどの国でも預金に課徴金をかける可能性があることから、スペインやイタリアのような財政危機にある国で銀行から預金を引き出す動きが広まる可能性がある。
それは金融パニックを誘発し、世界大恐慌の再来などと考えてしまいそうだ。
どうなるか心配だ。

日本でも同じように預金に対して課徴金をかけるかもしれないと脅す話が出回っている。
そんなことはない。
何度も書いている気はするのだが、日本の財政危機が深刻化して返せない状態になっても、常に日本では借金によって資金を集めることができる。
今回のキプロスの場合のように、預金に対して10%ぐらいの課徴金をかける必要が生まれたとしても、その分借金をすればいいだけだ。
借金をし続ければ、いつかはインフレになることで、国民から税を取り立てる話になるのだが、円を使っているかぎり逃れようがない。

つまりキプロスのようにユーロという通貨を導入した国は、容易に国民から財産を盗むことはできない。
だから、預金封鎖のような荒事を使ってでも、取り立てる必要があるわけだ。
それに対して、日本は自国通貨建てで経済が回っているので、幾らでも国民から搾り取ることができる。
だから預金封鎖をして課徴金をかけるような荒事はしないで済むわけだ。

これは日本が恵まれているというより、本質的には日本国民にとってはよくないことだ。
自分たちの金が知らない所で盗まれることだからだ。
ただ預金封鎖を心配するのは馬鹿げている。

日本の国債が膨大だから日本円のハイパーインフレが怖いとは言っても、外国に預金をすれば助かるともいえない。
むしろ今回のように外国の方が危ない。
安易に外国に資産を移せという主張がおかしい理由だ。
キプロスに預金している日本人がいたら大変だろう。

日本でも財政危機によってハイパーインフレが発生することがあるかもしれない。
しかし、その場合その前にインフレによる非常に景気のいい時代が来るはずだ。
それからハイパーインフレの心配をしても十分間に合う。
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続:北朝鮮の核実験は終わりの始まりとなる

2013.02.13 Wed

21:49:51

北朝鮮が三回目の核実験を実行した。
北朝鮮の核実験については、「北朝鮮の核実験は終わりの始まりとなる」の記事で考察しているが、今後の状況について考えていない部分があったので補足したい。

北朝鮮の核実験はアメリカとの直接交渉が目的だと新聞記事には載っている。
朝鮮戦争の休戦協定を永続的なものにし、国内の体制を保証させようというのだ。
この理屈自体はおかしいと思っている。
なんと言っても、朝鮮戦争の休戦協定が結ばれてから60年近く経つ。
その間不穏な情勢が続いてはいるが、戦争にはならなかった。
北朝鮮の体制も安定して続いている。
実際のところ、周辺国のどの国にしても北朝鮮を崩壊させたいと考えているかは微妙だ。
政権転覆後の難民の発生や経済援助の後始末のことを考えると、今のままでいてくれた方がずっといい。
金正恩体制を転覆したい国は、拉致問題を抱えている日本ぐらいだろう。
それなのに、北朝鮮がアメリカとの直接交渉を主張するのは、その段階で援助をせびろうとしているからだ。
クリントン政権のころの核開発を中断する代償ということで、手に入れた経済援助が忘れられない。
核とミサイルの開発によって、再度援助を手に入れて、それをずっと続けていく、それが北朝鮮の外交目的だ。

しかし、世界も北朝鮮の瀬戸際外交のことをよくわかってきた。
恐喝だと断じる意見は見なくても、意図的に危機を作り出しているという見方をほとんどの国がしている。
アメリカも北朝鮮の行動を黙殺しようとしている。
北朝鮮は核とミサイルの開発に成功しても、世界が無視を続ければ、開発の代償を手に入れることができず、体制は深刻な危機に陥るというのが前回の私の予想だった。

考慮がもれていたのは、アメリカから代償を手に入れられなければ単純に困ると思っていたが、他の国に核やミサイルを輸出することで開発の成果を手に入れようとする可能性だ。
北朝鮮に対しては国連決議で大量破壊兵器に関しての輸出入が制限されている。
しかし、核やミサイルを欲しがっている国があるならば、決議を無視して輸入することも十分にありうるだろう。
イランやベネズエラはそんな国かもしれない。
アメリカから攻撃される可能性があると信じる国ならば、飛びつく可能性はある。
北朝鮮がアメリカから相手にされず、追い詰められれば核兵器の売却は当然ありえることだ。

無秩序な核兵器の拡散は世界秩序に対する深刻な問題だ。
イランが北朝鮮から核兵器を購入して、イスラエルを攻撃するのは世界にとって悪夢としかいいようがない。
アメリカは絶対にこれを阻止しようとするだろう。
どうしたら阻止できるか。
基本的には核兵器の輸送を絶てばいい。
核兵器が物理的にある程度の重さと大きさを持つ以上、輸送手段を排除すれば輸出はできなくなる。

北朝鮮からの輸送手段について、空路、海路、陸路と考えてみよう。
海路については、封鎖することで全面的に止めることも考えられるけど、臨検を行うことでも十分に代替できる。
どこへ行く国の船であろうとも、中国韓国ロシアの港に強制的に停泊させて貨物の中身をチェックすればいい。
作業量についてはわからないが、十分対応可能に思える。
空路は臨検のようなことはできない。
北朝鮮が空路で核兵器等を輸送できるような飛行機を持っているかは知らないが、基本空路輸送は全て禁止だろう。
北朝鮮は外国に空路で輸出するためには、中国台湾日本ロシアのどれかの領空もしくはそれに近い領域を飛ぶ必要がある。
物理的に強行するとしたら、日本と台湾の間の空域だろうが、日米の空軍力ならば十分に対応可能だと思う。
陸路は中国ロシア韓国の三つしかない。
核兵器の拡散に関してはどの国も反対のはずだ。
だから、そのような物資の輸送をチェックすることは十分期待できる。

問題なのは中国に北朝鮮からの航空輸送の封鎖と海上輸送の臨検を認めさせることができるかどうかだ。
中国が認めれば国連での安全保障決議もできるだろう。
中国も北朝鮮の体制を崩壊させることは望まなくても、核兵器の拡散には反対するはずだ。
イスラム原理主義の手に渡って、中国国内でテロに利用される可能性だってある。
だとしたら、海上と航空での輸送を制限することも認めるだろう。
北朝鮮の体制崩壊を懸念するとしても、北朝鮮の貿易自体は中国と陸路を介せば普通にできる。
核兵器等の輸出は、中国がチェックすれば対応できる。
北朝鮮は嫌がるだろうけれど、北朝鮮に対する生殺与奪の権利を持つことは中国にとっても、それほど不利な条件とは思えない。
国連決議で通るかどうかは微妙かもしれないが、アメリカ日本韓国ロシアの有志による封鎖は認めるのではないだろうか。
認めると思いたい。

中国が認めない場合は北朝鮮の行動を是認することになり、今回の核実験も本質的に中国と北朝鮮がぐるになって実行したと解釈しなければならない。
可能性としてはありうるけれど、これは中国が完全に世界の秩序の破壊者になろうとしていることであり、今回の考察からは除外しておく。

日本はアメリカと協力して、国連安保理で北朝鮮への航空輸送の禁止と海上臨検の決議が認められるように努力すべきだ。
認められない場合、アメリカを中心とした有志連合で強行すべきだ。
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北朝鮮の核実験は終わりの始まりとなる

2013.02.01 Fri

21:56:42

北朝鮮が核実験の準備をしているらしい。
北朝鮮のミサイル発射や核実験は恐喝が真の目的だ、と私は推測していた。
金正日から金正恩に代替わりしたことで、その目的などはどう変わったのだろうか。

まず、恐喝はできなくなりつつある。
恐喝というのは、ばれたら相手も困るが自分も逮捕される。
だから秘密裏に実行しなくてはならない。
北朝鮮の恐喝外交も核兵器を使ってしまえば、間違いなく自国も滅ぼされるだろう。
指導者たちは命がない。
それなのに、今まで恐喝が成立してきたのは、金正日が狂っていて正常な行動が取れない可能性があると、回りの国々が考えていたからだ。
北朝鮮の非常識な行動は、その印象を強めるためにわざと行ってきたものだ。
急にすごむことで自分たちが暴力に訴えることは、全然怖くないと回りに印象付ける。
チンピラやくざのやり方だ。

しかし、金正日は死に新しい指導者金正恩に代わった。
彼はまだ30になったばかりであり、妻がいて、子供ができたとかできそうだという話だ。
普通に考えれば最高に幸せなときだ。
実際テレビで見るかぎりでは、ちょっと小太りで健康に見え、屈託がない感じだ。
つまり、恐喝外交など一番不向きなタイプだ。
守るものがあっては脅すことなどできない。

それでも、なお恐喝外交を目指すならば、それなりの演出をしなくてはならない。
まっとうではない人間という印象を振りまく必要があるのだ。
でも、金正恩はその逆をしている。
最初のミサイル実験のとき失敗を早めに認めているのは国民にいい指導者という印象を与えようとしているからだ。
それは普通の人間らしさを示すものであり、不条理性がまったくない。
それなのに、ミサイル実験や核実験を強行しようとしているのは、今までの惰性で進んでいることを示している。
つまり、目的と演出がずれているのは、政治家として経験が浅すぎるのだろう。

下記の記事によると、金正恩は改革路線を目指そうとしていたのだが、軍部の抵抗によって挫折しつつあるらしい。

韓国・国家情報院の幹部をスクープインタビュー 北朝鮮内部崩壊 金正恩の時代はまもなく終わる

引用開始

つまり、正恩が進めたいのは、中国式の経済改革なのだ。実際、今年の6月28日には、金正恩政権のマニフェストともいうべき『新経済管理改善措置』を発表した。これは、経済運営の主管を朝鮮人民軍から内閣に移行し、一部で市場経済を容認していくという画期的な内容だった。

だが金正恩が今年後半に行ったのは、経済改革ではなく、その反対の政策、すなわち軍の強硬派が主導したミサイル発射だった
引用終了

北朝鮮は核兵器とミサイル開発に多大の労力を注いできた。
北朝鮮の軍部や産業のシステムがその推進力となっている。
それを止めるには、強力な政治的意思と実行力が必要だが、金正恩にはたぶんないのだろう。
軍部の中の指導者を一人や二人更迭することは、難しくない。
政策が変わっていなければ、単なる個人的事情だと思って下部の人間はそれを認める。
けれども政策が変わり、自分たちの利益に悪影響を及ぼすと思えば反発する。
その反発を受けて、政策変更を強行できるほどの願いも支持母体も、金正恩にあるとは思えない。
結局ずるずると今までの政策を是認することになる。

問題なのは、核開発が成功した場合の次の段階だ。
今までは、金正日の外交の元、なんだかんだと金を手に入れてきた。
しかし、韓国は保守政権のもと支払いが悪くなっている。
今回のミサイル実験と核実験は韓国の反発を招くだろう。
なによりも、北朝鮮の若い指導者をなめているので、言うことを聞くわけがない。

そして、核実験が成功すれば一応今までの政策の目的が達成されたことになる。
だから、今まで苦労してきたことの果実が手に入らなくてはならない。
それを諸外国が拒否すれば、北朝鮮内部は大きく動揺する。
軍部は外交の失敗による指導者の無能のせいだと判断するかもしれない。
そうなればクーデターだ。

未来のことはわからないけれど、北朝鮮がまた暴挙を実施することを含め、本当に目が離せない状態が続きそうだ。
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金正恩体制の前途は厳しい

2012.07.23 Mon

20:51:02

北朝鮮で李英鎬朝鮮人民軍総参謀長が解任された。
軍人としてはトップの実力者で、先軍政治をキャッチフレーズとする北朝鮮の国では、金正恩に次ぐNo.2の実力者といってもよかった。
それが解任されたのは、内部で権力争いが過熱しつつあることを意味している。

権力争いと言っても、何を原因にして起こっているかはよくわからない。
李総参謀長は強硬派で、中国から支持されている改革開放派が追い落としたという説を見たことがあるが、本当かどうか。

金正日は独裁者で、とにかく北朝鮮を掌握していたことは間違いない。
それが死んだことで、北朝鮮は誰がリーダーシップを取っているかわからなくなっている。
金正恩は若僧で自分の意見を持っているかどうかもさだかではない。

けれども、金正恩はいい子を目指しているみたいだ。
ミサイルの失敗を公表したこと、ディズニーのキャラを放送させたこと、妻と思える女性と一緒に報道させていること。
これらのニュースは国民に良く思われたい気持ちを表している。
つまり恐ろしい父というより、国民に親しまれる兄ちゃんというわけだ。
けれども、当然ながらそれは国民から見れば怖くない。
いままでの自由が抑圧された社会に不満を持っていた人は、怖くなければ好き勝手に行動し始める。
人々は自分たちの意思をあらわにして、経済上の利益を目指して活動する。

けれども、これらは政権の安定にプラスに働くとは思われない。
北朝鮮の硬直した体制は自由な活動を許容していない。
体制に依存した支配層は自分たちの権益が脅かされることを好まない。
自分たちの力を持って反撃してゆくだろう。
体制内部に政策をめぐって対立が生じたことになる。

李総参謀長の解任は明らかにその対立の一つの現われだろう。
そして、指導者は権力の維持を図るならば、どちらかの政策に与し、自分の立場をはっきりさせるしかない。

金正恩の目指すものが改革開放であるならば、そちらの派に乗って指導することになる。
しかし、それは今までの祖父、父の政策の真逆の道だ。
体制を強硬に支えてきた支持者を切り捨ててゆく行為になる。
それは安定につながるだろうか。
むしろ、政権基盤が危うくなってゆく。

毛沢東の左派政策はその死によって断絶し、反対派であったトウ小平が国の指導権を握って中国を動かしてゆくことになった。
毛沢東の後継者であった華国鋒は改革政策を実行していたにも関わらず、結局は追い落とされた。
ソ連ではスターリンの後継者だったマレンコフは、スターリン体制の批判が盛んになるにつれてフルシチョフに解任された。
前の政策に加担していたのに、それをしらばっくれて新しい政策を実行する派に移動するのは難しい。
不可能だといってもいいかもしれない。

金正恩がロケットの発射実験を強行したのは、金正日の瀬戸際政策を実行し続けることを意味していたはずだ。
それが改革開放政策に移動することは今までの政策を覆すことを意味する。
支持者たちはてんでばらばらになってしまう。
独裁者の後継が難しいのは、隠れていた対立があらわになるので、それを押さえ込むためには強力な力が必要になり、血を怖がることない弾圧が必要だからだ。
しかし、金正恩は上で述べたように、いい子になろうとしている。
それは独裁者と両立しない。
金正恩体制の前途は厳しい。
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ドイツは南欧諸国を助けられない - ギリシャ危機の本質(その6)

2012.07.02 Mon

20:48:00

前回の話の続きをする。
ドイツが南欧諸国を援助するのは認めたとしても、それだけでは解決にならない理由だ。

ドイツが南欧諸国を援助すれば問題は解決するという主張がある。
ドイツはユーロ圏が成立したことによって得をしている。
ユーロが成立していなかったならば、マルク高で輸出不振に陥り、経済は苦境に陥るだろう。
だから南欧諸国を援助するのは当然だという主張だ。
この考え方を認めたとしても、幾らなんでも無条件に請求書を回されて支払うわけにはいかない。
少なくとも幾らまで援助するかは決めておく必要がある。

夕張市の地方債は国が返済を保証している。
その替わりに、夕張市は地方債の発行額に対して国から制約を課されているし、返済するのが難しくなった場合には予算自体も国から監視される。
ドイツと南欧諸国の関係も同じでなくては、おかしいはずだ。
援助はイコール、監視と制約を意味する。

そしてドイツは無条件に南欧諸国を援助するゆとりがあるだろうか。
ユーロ圏ではどの国も通貨の発行権を持っていない。
通貨の発行権を持っているECBは、通貨価値の維持のみを目的として通貨を供給している。
そうするとドイツも限度を越えて南欧諸国に資金を援助すれば、当然財政危機が発生する。
ドイツは経常収支の黒字国なので、黒字分の金額が銀行にほとんどたまっている。
銀行は自国の国債を好む傾向があるから、経常収支の黒字額までドイツも国債発行ができるかもしれない。
しかし、これは危険な道だ。
経常黒字による資金余剰はドイツ政府の所有物ではなく、ドイツ国全体の所有物だ。
それを最終的にドイツ政府が税金として、取り立てることができるかははっきりしない。
インフレによって自動的に取り立てるシステムがない以上、もっと少ない金額が上限となるだろう。

ユーロ圏は通貨の発行に制約があるので金本位制に近いシステムとなっている。
そのため無制限に流動性を供給できない。
つまり流動性の危機、銀行や政府が借金を払えない状態になった場合に完全にそれを防ぐ方法がないのだ。
銀行の流動性の危機の場合はECBが無条件に流動性を供給するみたいではあるが、国家の場合は違うことになっている。

そうすると無条件に資金を援助するためには、少なくとも通貨の発行権を支配できなければならない。
ドイツが握るか、EU全体のシステムで握るかだ。
ドイツが握るというのはある意味正しい選択に思える。
その場合ECBは実質的にドイツ中央銀行となり、ドイツ政府がユーロ圏の中央政府になる。
ただこれは他のユーロ圏の国々が認めないだろう。
ドイツの特権が大きすぎるわけだ。
自分たちの国は自由に借金できないのに、ドイツだけは制限なく借金できるのを認めることができないのは当然だろう。
また、ドイツ自身も嫌がる。
ナチスのようなヨーロッパ征服の再来と見られることは、避けたいわけだ。

選択すべき解はユーロ圏全体が通貨の発行権を持つことだ。
ECBが暗黙の保証をユーロ共同債に持つという意味だ。
そうすればケインズ政策を自由に発動できる。
財政危機のために予算を拡大できない国も、それを解消できる。
そのためには、ユーロ圏全体で財政支出する方法を議論して決定しなければならない。
幾らなんでも、国ごとに好き勝手にやるわけにはいかない。
それはつまり財政統合になる。
結局ドイツの主張通り、ユーロ共同債の発行には財政同盟が必要だというのは明らかに正しいのではないだろうか。

しかし「財政同盟には即効性がない。何年もかかるのでは現在の危機に対応できない。」という批判がある。
イギリスの「Economist」や「Financial Times」はそう声高に主張している。
ドイツが負担をさぼっているからいけないというわけだ。
でもドイツが資金援助をするのに、「黙って金を貸せ」というだけで借金できるのはおかしい。
南欧諸国は担保を提出するか、それができなければ返済計画を立て、それに従って実行する必要がある。
実際ギリシャ、アイルランド、ポルトガルなどは、EUに支援を要求し、財政再建計画をたてて援助をもらっている。
スペインやイタリアもEUに正式に資金要請をして、返済計画を立てることでドイツに資金援助をしてもらえばいい。
それで基本的には問題解決だ。

ただし、前述べたようにドイツの負担能力にも限界がある。
IMFからの援助も期待できるが、それ以上の資金が必要ならばどうするか。
金がない以上デフォルトすればいい。
全額払わないではなくて、返済条件を後ずらしにすればなんとかなるのではないか。

英米のジャーナリズムが批判するのはデフォルトすれば、世界恐慌の危険性があることだろう。
確かにその危険性はあるかもしれない。
でもその危険性は世界全体で負担すべきことだ。
デフォルトをどうしても避けたいならば、ドイツの資金に制約がある以上、世界全体で負担するしかない。
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ユーロ共同債もECBの国債買取も解決方法にならない - ギリシャ危機の本質(その5)

2012.06.30 Sat

20:57:03

ドイツのリーダーシップに対する批判は強い。
ドイツが緊縮財政一本やりで、経済成長を軽視しているから、EUは危機に瀕しているというわけだ。
ユーロ共同債を認めるか、ECBが国債を積極的に購入しろと主張している。

実際単にドイツが積極的な財政政策に転換するだけでは十分ではなくなっている。
国債の金利が急騰し、資金繰りに余裕がなくなっているスペインやイタリアに即効性のある対策が求められている。

けれども、ユーロ共同債やECBが国債を積極的に購入することが認められるだろうか。
それらはどの国でも好き勝手に財政赤字を出していい権利になってしまう。

ECBが国債を買い続ければ、最終的にはインフレにいたる。
インフレはユーロを持っている全ての国が分担することだ。
特定の国の好き勝手な消費の後始末を、他の国が認めるわけがない。

ユーロ共同債も同じことだ。
ユーロはECBが管理するならばインフレにはならないかもしれない。
でも各国が好き勝手にユーロ共同債を発行し続ければ、ある意味無限に増え続けてしまうだろう。
実際ユーロ成立時、金利が大幅に低下しドイツと同じようになった各国は国債を大量に発行するようになった。
今回もユーロ共同債ができれば、金利は下がるわけだから、なんの制約もなければ同じように、支出は膨張していくことになるだろう。

結局なんらかの制約がなければ、ただ乗りしようとする誘惑を防ぐのは難しい。
そうすると必要なのは財政同盟という話になる。
各国の支出を監督して、制限を加えるわけだ。
ドイツはそう主張している。
南欧諸国も賛成してよかろうと思うのだが、あまり進んでいない。
銀行同盟を主張するにしても、財政同盟と同時進行でいいはずである。
それを拒否するのは、ドイツから見ると南欧諸国は財政支出を制限する気がないと同じだ。

そもそも危機に陥った国は、EUに支援要請をすれば助けにきてくれる。
ギリシャを除けば債務も保証された。
IMFからの支援もあるのだから、これで何が問題かという気もする。

なんか、まとまらなくなってしまった。
この続きは次回に。
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