異をとなえん |

続:円安株高への懐疑

2013.04.10 Wed

21:53:14

黒田新総裁の異次元の金融政策はとにかく大量に国債を購入して、貨幣をあふれさせようとする政策に見える。
インフレ率が2%になれば、価格が下がらない資産を買っておくと儲かる理屈だ。
その理屈が正しいか疑問はいろいろあるけれど、市場はそんな簡単な理屈を信じて、国債を買い、株式を買い、不動産を買い、ドルを買っている。
そして、みんな上がっている。
初動としては成功だ。

けれども、このルートは本当に成功するのだろうか。
インフレ率が2%でも経済成長をするには賃金の上昇が必要だ。
輸入物価が上昇することによってインフレ率が2%になるのでは、内需が減少するのだから満足に成長できるかどうか疑わしい。
少なくとも一般国民には成長の恩恵は行き渡らないだろう。
輸出が増えることでの成長が内需の減退分を上回れば経済は成長する。
たぶん、ここまでの成長はできる。
ただこれだけでは、賃金は上昇しない。
賃金が上昇するには、輸出による経済の拡大が続くことで労働力が枯渇し、失業率の低下があって始めて起こる。
ここらへんから自信がなくなってくる。

まず労働需要が増えるには、輸出企業の収益が改善し、利益が増えるだけでは起こらない。
輸出で儲かってしかたがないからと、設備投資を増やして輸出量を増やさなければいけない。
でも、輸出企業は金融危機によって、存亡の危機に直面した。
ゴーン日産社長は円安になっても、日本で生産を増やすことはないと明言している。

引用開始

【ニューヨーク時事】日産自動車のカルロス・ゴーン社長は27日、
ニューヨーク国際自動車ショーの会場で記者会見し、円安が進行しても、「日本国内から(北米に)移管した生産が戻ってくるとは正直、思わない」と述べ、円相場の動向にかかわらず、生産の現地化を進める方針を示した。

ゴーン社長は、「為替の変動リスクを抑えるためには現地化が必要」と強調。
一方、円安によって、「国内生産100万台を維持するという計画における不利な条件が減っている」と指摘した。日産は既に、北米での販売比率が高いスポーツ用多目的車(SUV)「ローグ」や「ムラーノ」の生産を九州工場(福岡県苅田町)から米国に移管することを決めている。
また、日本が交渉参加を決めた環太平洋連携協定(TPP)については、現地生産が拡大しているため、「日産への影響はあまりない」との見方を示した。 
引用終了

日本の輸出産業の主力である自動車産業が輸出を増やさない。
自動車産業と共に日本の輸出の主軸であったエレクトロニクス産業は、円安にも関わらず利益が増えるというより、やっと収支がとんとんになる段階で、輸出量を増やすところまでいかない。
実際輸出できる製品がない状況だ。

円安が続けば輸出企業の収益の改善は続くとは思うが、輸出量の増加という形で生産が増えていくにはかなり時間がかかりそうだ。
つまり労働需要の増加、賃金の増加という流れはあまり期待できない。
その場合、企業はとにかく儲かり、国民は損をしていく、そんな未来が予想されてしまう。
この状況が続くならば、日銀の金融政策は否定されてしまうのではないだろうか。
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円安株高への懐疑

2013.04.09 Tue

22:00:59

黒田氏が日銀総裁に就任して、異次元と呼ばれる金融緩和を行い、円安株高が続いている。
ドル円相場は92円台から一気に100円に届きそうな勢いだし、日経平均は12000円から13000円を突破するまでになった。
株高は基本的に歓迎すべきことなのだから万々歳でいいのだけれど、どうも懐疑的になって仕方がない。
今回の景気回復はアメリカ経済に引っ張られる形で起きているのだが、アメリカ経済の復調がいつまで続くかわからないのが最大の疑問になっている。

今回の日本の株高の最大の原因は円安だ。
円安によって輸出企業を中心に利益の回復が起こり、それが株式相場を上昇させている。
円安は輸入企業の利益を減らす側面のあるのだが、それらの企業は中小企業が多いので大企業中心の株式市場にあまり関係がない。

為替相場を考慮して未来を予測していくと、どうも頭が堂々巡りして確固たる土台を持てないような感じを持つことがある。
為替相場の変化がプラスの影響とマイナスの影響を同時に発生して、両方働いた場合にどちらの影響の方が強いかよくわからなくなるためだ。
今回のドル高円安も輸出が増える、輸出企業の利益が上昇する、といった経済にプラスな面と輸入物価の上昇によって内需を減退させるマイナスな面がある。
どちらが勝つかというと、基本的にはアメリカ経済と日本経済、両方合わせた経済が成長できるかどうかに依存するだろう。
二つの国を合わせた経済が最終的に成長するならば、円安ドル高はアメリカ経済の成長のおこぼれを日本経済が受け取る形で発展できることを意味する。
アメリカという大旦那が元気良く成長するならば、そこに商品を売っている下請けも元気が良くなる話だといっていい。
問題なのは、アメリカ経済が回復しないならば、日本経済の回復も怪しいということだ。

リーマンショック前、日本経済はようやくバブル崩壊以後の停滞から脱出して成長軌道に戻った印象があった。
けれどもそれはアメリカ経済の成長に伴う成長であり、日本経済の自律的な成長とはとうていいえなかった。
だからリーマンショック後の金融危機によって、アメリカ経済の成長がストップすると、日本もその余波を受けて世界の中でもっとも経済が縮小した。

今の景気回復もその時の印象にだぶる。
アメリカ経済の好調が資金をアメリカに吸収させ円安ドル高を導いていた。
円安ドル高が輸出企業の好調を生み、輸出企業中心に設備投資の拡大を促した。
もっとも現在の日本の輸出企業はアメリカ経済に懐疑的になっている。
だから設備投資がそれほど盛り上がっていないという違いがある。

どちらにしても、アメリカ経済の復調が止まれば日本経済の景気回復は止まるだろう。
アメリカ経済の復調が止まったけれど、日本経済が自立的に成長するので景気回復が続くということはありえない。
アメリカの景気が悪くなれば、為替相場は円高ドル安に反転し、それに伴う株式相場の上昇は止まってしまう。
つまり今の景気回復のエネルギーが全て反転する形になるのだから、日本経済も必ずスローダウンしてしまう。

結局、日本経済の先行きはアメリカ経済頼みということで、懐疑的になって仕方がない。
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続:TPPに早く参加すべきと主張する人の考えが不思議だ

2013.02.25 Mon

21:49:23

前回の記事を書いた後、考えてみた。
最初に記事を書くときは考えがまとまっていなくて生煮えの部分がたくさんある。
そこで、一度書くと抜け落とした部分が見えてきて、より本質に近づいた考えができる。
前回の記事では、TPPの本質がよくわかっていなかった。
しかし一度書くことで、TPPの本質はブロック経済化だと確信できた。
TPPに賛成している人たちの目的が日本の関税をなくすことではなくて、アメリカと早く手を結ぶことを主張することで、そう感じる。
もっとも、中国との対立が激化する以上、日米で手を組んで中国を排斥するブロック経済圏を作ることは必要だ。
ただ、自由貿易を支持する人間として、なんとなく嫌な感じを持つだけだ。

TPPが開かれた自由貿易圏を目指すならば、参加国を増やしていかなければならない。
そうしないと、結局は参加国と非参加国の間に障壁を作り、ブロック経済圏を現出することになる。

全てのルールや基準を一元化することはできない。
どんな社会にもローカルルールは存在する。
国際社会ならばなおさらだ。
だから、全ての国が参加できるようにするならば、ローカルルールを許容する仕組みが必要だ。
標準のルールとローカルのルールを決定し、どうしても標準のルールを採用したくない場合、自国固有のローカルルールを認める必要がある。
ローカルルールを絶対に許容せず、標準のルールを全ての参加国に押し付ければ、一部の国はどうしても参加できなくなるだろう。

たとえば、EUにおけるユーロの採用もその一例だ。
イギリスはユーロの採用が金融国家としての基盤を揺るがすと考えて、ユーロ制度への参加を拒否した。
もしユーロへの参加がEUに参加する国家の必須条件であったならば、その時点でEUは分裂することになる。
つまりある程度の自由度があったから、EUは存続できたわけだ。

TPPにはその自由度が少ない感じを受ける。
原加盟国の特権とか、「聖域」という概念が、他のブロックを敵視しているように受け止められる。

TPPには開かれた未来と閉じられた未来がある。
中国という世界一の貿易大国が最初から参加していないのは、結局は閉じられた未来を暗示しているようにしか見れない。
オバマ政権が中国を外して、TPPを形成しようとするのは、中国を外した未来をつくりたいからだろう。
緩やかな中国への不満がアメリカをそういう立場に追いやっている。

論旨がうまくまとまっていないが、TPPの本質に対する現在の印象を書いてみた。
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TPPに早く参加すべきと主張する人の考えが不思議だ

2013.02.23 Sat

21:47:17

TPPに早く参加すべきと主張する人の考えを不思議に思っている。

かんべえの不規則発言2月14日の記事を見ると、次のようにある。

引用開始

○ところが、です。仮に今年の秋くらいにTPP交渉がまとまってしまって、その後から日本がこそこそと参加しようとすると、「聖域」が認められないということになってしまう。既に合意ができてしまってから、「アメリカの砂糖が認められるんなら、わが国のコメも認めてくれ」と言っても手遅れである。「われわれは交渉して妥結したのだ。交渉に参加していない日本は、この合意を丸呑みするかしないか、どちらかしかない」と言われてしまう。交渉に入ってしまえば、「コメは聖域だ」と言い張ることもできるけど、参加自体をためらっていると、そのチャンスも失われてしまうのです。

○だったら、今すぐ参加を表明した方がいい。このタイミングを逃してしまうと、参院選が近づくにつれて自民党議員に対するプレッシャーは強まるだろう。それこそ、議員さんたちが何回も踏み絵を踏まされてしまうのです。それで参院選が終わった後に、「やっぱりTPPに参加します」などと言ったら、これはやっぱり許されなくなってしまう。だったら、今ここで決断する方がいい。
引用終了

何が不思議なのかと言うと、TPPに早く参加すれば「聖域」が認められるというのは利点ではない点だ。
自由貿易は関税をかけない方が消費者にとっては利益になるから望ましいというのが、経済学の理屈だ。
自由貿易協定に参加する最大の利点は、自国の圧力団体を押さえ込んで米などの農産物の関税が廃止されるという点にある。
少なくともTPPに参加すべきと主張する人たちの理屈はそうだと思う。
だから、早期にTPPに参加しないと聖域が認められなくなるというのは、どうみても望ましいことのはずだ。

早期にTPPに参加すれば独自の日本ルールが認められなくなるという話もあるが、本当にそれが世界の標準ならば日本ルールを変更した方が望ましいのではないだろうか。
少なくとも、独自の日本ルールを守ることが絶対的な国益という理屈はおかしい。

そんなわけで、TPPに参加した方いいかどうかよくわからないでいる。
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続々々:年末アメリカの株式相場は下げているのに、なぜ日本の株式相場は高値をつけたのか?

2013.01.11 Fri

21:37:55

続々:年末アメリカの株式相場は下げているのに、なぜ日本の株式相場は高値をつけたのか?の話の続きだ。

円安が続いている。
89円台も超えてきた。
2010年半ばごろの水準にまで戻ってきたわけだ。
今日の円安の直接の原因は、11月の経常収支が赤字になったことだろう。

11月経常収支は2224億円の赤字、1月以外で初の赤字

引用開始

財務省が11日に発表した2012年11月の経常収支は2224億円の赤字となった。月間の経常収支が赤字となるのは昨年1月以来10カ月ぶりで、赤字幅も昨年1月に次ぐ過去2番目の大きさ。
引用終了

円安の流れがあった所に、経常収支の赤字という、貿易収支の赤字を所得収支の黒字で打ち消す構造が崩れたことで、流れが強まった。
投機のエネルギーもあいまって、まだ円安は続きそうな勢いだ。
為替相場の予測は難しすぎるので、別のことを考えたい。

経常収支が赤字になったのは記事によると二つの要因がある。
一つは貿易収支が巨額の赤字になっていること、もう一つは所得収支が季節的な影響で大きく減っていることだ。

ここで注目したいのは、貿易収支が巨額の赤字になった理由だ。
輸出は前年同月比で減り続けているけれど、輸入は少しながら増えている。
輸出が減り続けているのは、中国とのごたごたもありそうだけれど、世界経済全体の景気がおかしくなっていたからだ。
それなのに輸入が増えているというのは、日本自体の景気はそれほど悪くなっておらず、自律的に成長していることを示している。
実際最近の日本経済では内需はプラス成長なのに、外需がマイナスでそれが足を引っ張っていた。
もっとも7-9月期は個人消費もマイナスになっていたけれど。
重要なのは外需に関係なく、日本国内が自律的に成長しつつあることだ。

もう一つの所得収支が減っていることにも重要な点がある。

引用開始

安定的な黒字を計上してきた所得収支も、11月は8915億円と昨年6月以来の低水準にとどまった。日本に拠点を置く海外企業の配当金の本国送金などを含む直接投資収益が、1791億円と11年2月以来の水準で伸び悩んだことに加え、国内企業の配当金など証券投資収支も6592億円と昨年6月以来の少なさだった。所得収支の減少について財務省は「個別の企業などの方針によるもの」とだけ説明している。
引用終了

所得収支の減少が個別の企業の方針で起きているのだとしたら、理由は直接投資を増やしているからではないだろうか。
外国に直接投資をしている企業は当然海外投資の先端企業だ。
日本の直接投資が増えている局面なら、日本に資金を戻すことなく、再度海外投資に回しても不思議ではない。
だとすると、所得収支の減少自体も海外への直接投資の増大で説明できることになる。

日本が成長するためには、内需の増大が絶対の条件だ。
人口が減っているから、内需は減少する。
だから海外の需要を取り込むしかない、という考えは根本から間違っている。
海外の需要を輸出で取り込もうとし、内需が減少していれば、必然的に貿易収支は拡大し、どんどん円高が進むことになる。
当然儲からないから、輸出できなくなる。
買うことをしないで売り続けていけば、経済活動は回っていかない。
だから日本が輸出を増やすためにも、内需を増やさなければならない。
人口が減少するならば、当然のことだか、新製品の発表や品質を向上させるなど付加価値を上げていく必要がある。
これがガラパゴス現象と見える、日本の成長の道だ。

これ以外には成長の道はないと思っていたのだが、もう一つ別の道があることに気づいた。
それは海外の需要をより儲かる方法で取り込むことで、内需を増やす方法だ。
海外に高値で製品を売って儲かれば、日本国内の製品が同じでも消費が増えていく。
賃金が上昇すれば消費が増えていくと言ってもいい。
ただ、これを輸出で実行することは難しい。
円高になればどうしても儲けは減る。
だから直接投資による外需の取り込みが重要になってくる。
最近の直接投資の増大は、日本の経営力が増したことなどによって、海外でも成功しつつあるからだ。

そして日本の直接投資が増えているのは、日本国内で培った新しい市場が世界でも受け入れられているからだ。
コンビニやユニクロの成功がそれを示している。
つまり、日本国内での市場拡大も、海外での市場拡大も本質は同じことなのだ。
日本の企業が世界の先端の市場を開拓しつつある。
その証拠だと今回の国際収支統計を受け止めたい。
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続:アベノミクスは成功するか?

2013.01.10 Thu

21:54:09

アベノミクスには、前回批評した財政政策以外にも、リフレ政策と言った側面がある。
日銀に対して2%のインフレターゲットを押し付けて、なんとしても日本国内にインフレを実現させたい構えだ。
これについても考えてみたい。

まず、私は何度か書いているがリフレ政策には反対である。
効果がないから意味がない。
しかし害があるかと言えば、ほとんどないと思う。
そうすると効果があると思う人たちに対して働きかける力を考えれば、実行しても損がないのかもしれない。
つまり、資産価格が本来ふさわしいと思われる価格より安くなっているならば、なんらかのショックによってその価格に戻ろうとするだろう。
リフレ政策はそのショックになりうる。
そして、資産価格が上昇すれば、その分豊かになったことで消費が促進される。
景気好転が期待できることになる。

リフレ政策には効果がない理由については何回か書いているので、害がない方の話をする。
リフレ政策と言うと、ハイパーインフレになるという批判がすぐ出てくる。
しかしハイパーインフレは歴史上でも、そんなにたくさん起こったわけではない。
第一次世界大戦後のドイツが有名だが、基本的には巨額な賠償金を支払うためにとにかく金を集める必要があったから起こっている。
本来なら税金でかき集めるのが正しい方法なのだろうが、金額が大きすぎて到底できない。
そもそも資産の確定をするだけでも困難だ。
だから紙幣を大量に刷って、国民から強奪したわけだ。

第二次世界大戦後の日本では空襲によって生産能力が崩壊してしまった。
だから政府は税金による収入がなくなってしまった。
けれども経済活動を回すための政府の支出は必要だ。
しかたがないので、紙幣を増刷して支払いにあてた。

最近ではジンバブエの例がある。
これは白人の資産を強奪して、黒人に分配しようとする政策から始まった。
白人が逃げ出すことによって、経済活動自体が崩壊していくのだが、それでも政府は今までどおり消費を続けることを目指した。
金が入ってくるあてがないのに消費するのだから、その分なんとかしなくてはならない。
そこで紙幣の発行に頼ることになり、ハイパーインフレが発生した。

これら3例から考えると、ハイパーインフレは政府が国民の資産を強奪することによって起こることがわかる。
現在の日本では、少なくとも政府が国民の資産を奪う必要があると思われない。
大量の国債や将来の年金の問題はあるけれど、基本的には循環すればいい問題である。
明らかに富がどこか別の所に流出するとか、なくなることさえなければ、ハイパーインフレなどにはならない。

ハイパーインフレにはならなくとも、石油ショック後に発生した20%以上のインフレが起こることはないのだろうか。
これも起こらない。
全財産賭けられる位、自信がある。
しかし、起こったとしても、それほど問題だろうか。
石油ショック後のインフレは金利を上げる等の政策を実行することで収まった。
つまり引き締め政策に変更すれば問題を解決できることは実証済みだ。
今の日本経済でその後の緩やかな成長が実現できるならば、文句を言う人はいないだろう。
だから、リフレ政策によってインフレ率2%を目指す政策が失敗し、2%以上になったとしてもそれほど問題はないはずだ。

そして、本当に重要なのはインフレが起こらない理由だ。
インフレになるには、需要が供給を上回る必要がある。
20%ものインフレが発生するには、直感的には20%以上需要が供給を上回らなくてはならないだろう。
もちろん、これは嘘で、需要の価格弾力性の違いによって幾らでも変わってくる。
でも大事なのは、高いインフレが起こるには需要が供給を大きく上回らねばならないことだ。
今の日本で需要が爆発的に増える可能性はあるのだろうか。
去年より今年、消費金額を20%以上増やすなんてありえない。
だから高いインフレは起こらないのだ。

しかし、海外で石油価格が急上昇した場合などはどうなるだろうか。
これはデフレ要因なのだけれども、それでもインフレが起こった場合の話だ。
海外で起こった問題なのだから、基本的に国内の金融政策とは関係ない。
だから、リフレ政策を実行してはいけない理由にはならないわけだ。

さてようやく、インフレ率2%が達成した場合を考察すべき所になった。
実のところ、この達成だって怪しい。
なぜならば、リフレ政策というのは成功した場合、インフレ率よりも、資産価格の上昇に働く力が大きいからだ。

リフレ政策は金利を極限まで低下することによって、投資を拡大させる政策と言える。
一番簡単な投資は底値をつけた資産を買うことだ。
実際金融危機前の日本では、地価が上昇していた。
最初は借金して土地を買っても、地代の利回りがそれを上回っているからと購入した。
そして、地価が上がっているからと、それを目当てに購入が始まった。
プチバブル状態と言える。
実際都心の地価はバブル時のころと同じくらいに回復した。
日本の銀行はバブルの経験が怖くて、不動産融資にはあまり手を出していなかったみたいだが、外資系金融機関が積極的に融資に動いていた。
それが金融危機によってはしごを外され、不動産会社が破綻した。
地価も再度低下していった。

リフレ政策は勝っている人間が多ければ効果がある。
不動産価格は下がらないと信じている人が多ければ、金利が安いと購入する人が多くなる。
そうなれば当然価格は上昇する。
みんながそう思えば実現する、自己実現的な予測だ。
問題は、資産価格が上がっても維持できるかだ。
金融危機後の日本のように土地価格が下がれば多くの人が損をする。
二度失敗すると、三度失敗する人は少ない。
金利と関係なく本当に資産が上昇するか予測することになる。
この時点でリフレ政策は効果が発揮できなくなる。

しかし、現在の日本では資産価格は大幅に低下し底値をつけている。
だから自然に反発が期待できるわけだ。
そう思えば、金利が安くなるのは最後の一押しになる。
アベノミクス成功の巻だ。

自然な反発が期待できるのに、金利をさらに下げるのは、あまりいいことではない。
だからリフレ政策には反対だが、金利はすでに下がりきっているともいえる。
だとしたら、アベノミクスは実行しても、たいして問題はないだろう。
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アベノミクスは成功するか?

2013.01.09 Wed

20:50:37

アベノミクスを批判する記事が幾つか出ている。

藻谷兄に聞く「リフレ策の正体」
「アベノミクスは陳腐で空虚です」

自民党は、はや利権政党に逆戻り?

公共工事を実行して土建屋の利益を守ろうとする、古い自民党の政策の実行に過ぎないという批判が多い。
批判には同意できるけれど、本当にダメがどうかは別問題だ。
昔ダメだからといって、今もダメかは別の話になってくる。

現在は昔と少し違っている。
小渕内閣のころの公共投資は景気対策のため、拙速でもいいから工事をしてしまった。
だから、後のテレビ番組では無駄な工事の典型として取り上げられるようなものが多かった。
変に装飾過多なゴミ処理工場とかが記憶に残る。

しかし、公共投資は小泉政権のころからずっと縮小傾向にある。
要望が強い公共事業も予算がなくて後回しにされた物が多かっただろう。
だから、だんだんと質の高い公共投資が残ってきているはずだ。
質が高いというのは、要請が多いので使う人が多くて、十分に利用される工事だということだ。
要望が多いプロジェクトでも、準備のために時間がかかるケースがある。
そういうプロジェクトが溜まっているはずだ。

たとえば、東京の三環状道路への投資は、賛同する人も多くて十分意義があるように見える。
また北海道新幹線や北陸新幹線も、私の目には観光需要を促進させる意味もあって十分投資する価値がある。
もっとも長崎新幹線には懐疑的だけれど。
これらの公共投資が本当に投資する価値があるかどうかは、当然のことながらわからない。
関連する人はより正確な予測ができるだろうけれど、最終的な予測は神のみぞ知る話だ。
作家の阿川弘之氏は東海道新幹線を、戦艦大和と万里の長城に匹敵するムダだと批判したらしい。
そして後でその不明を恥じたということだ。
後知恵なら、なんとでも言えるけれど、多くの人が実行して欲しい要望を出すならば、それは意義のある工事の可能性が高い。
また長期間要望が続くならば、それは本当に欲しがっている可能性が高いので、成功しやすくなる。
要するに、選挙で必死にがんばっている圧力団体の推す公共投資がいいということだ。
そんなプロジェクトが多くなっているかもしれない。

さらに地方自治体もかなり変わってきているはずだ。
小渕政権のころ、中央の旗振りの元にムダな公共工事をしてしまった地方自治体は困っている。
上下水道の投資はしたけれど、全然使う人がいないので、完全にムダになっているケースもある。
予算の大部分を中央政府が持ってくれると言っても、自分たちが負担した分の効用さえなければ、住民からの批判は免れない。
そして、借金は返し続けなければならないので、夕張市のように再建団体に指定されれば、安い給料で地方公務員は働かなければならない。
その二の舞はいやだろう。
だから、今回は中央政府がせっついても、かなり慎重に投資する可能性が強い。
とりあえず、新規の投資を行うよりも、今使っている設備に対してメンテナンスをするのではないか。
人口が減少していくなか、自分たちに本当に役に立つものに投資しようと努力するだろう。

それらを考え合わせてみると、アベノミクスは本当に役に立つ公共投資を実行する可能性がかなり高い。

心配なのは、東日本大震災の復興関連ぐらいなものだろう。
被害に合った三陸地方などの地域は本質的に津波などの災害に弱いのが問題に思える。
単なる地震の被害は日本どこでも起こりうる問題に思えるが、津波は明らかに限定されている。
明治以来、明治三陸地震、昭和三陸地震、東日本大震災と三回も大きな津波被害に合っているのは偶然ではない。
東北地方が貧しかった原因の一つでもあるはずだ。
人口が増えている時代ならば三陸地方でなんとかして暮らしていけるように努力すべきかも知れないが、人口が減っている時代ならば積極的に退避を開始すべきだ。
そういう意味で、復興関連の投資は必要最小限のものに絞るべきだ。
現在復興が進まないと言われるのは、ムダな投資になる危険性を考えて人々が投資を実行しないからだ。
それは正しい。

心配な所はあるにしても、アベノミクスの公共投資は効率的なものになりうる。
そして、マクロ経済的に有利な条件が整っているかもしれない。
バブル崩壊以後の公共投資が効かなかった原因は、経済の収縮過程の中で新規の投資を実行しても需要が供給を上回らなかったからだ。
だから全然経済の刺激にならない。
建設業もムダな仕事をしていると思えば、いずれは予算も減っていくだろうからと、関連した設備投資を実行しない。
それでは失業者の救済事業なだけだ。
その状況が変わってきている。

需給ギャップはバブル崩壊以後の調整によってかなり引き締まってきた。
たぶんバブル崩壊後の調整は小泉政権のころに終了して、現在は金融危機によって発生した需給ギャップの調整だ。
それも震災対応などで改善されつつある。

実際、建設関連の労働者は人手不足のため賃金が上がっている。

引用開始

 2011年3月の東日本大震災以降、建設会社が被災地だけでなく全国で技能労働者の確保に苦労している。復興需要の増大に伴い、技能労働者の賃金は上昇傾向にあり、その市場は全国的に「売り手市場」となっている。
引用終了

パートの従業員の給料も上がっている。

ここでさらに公共投資を増やせば、労働者が足りなくなるだろう。
そうすれば当然賃金は上昇するので、成長のサイクルが回り始めることになる。
賃金が上昇すれば消費が増え、その結果成長していく。
十分に薪が乾いたので、火をつければ燃え上がるようなものだ。
アベノミクスはその火のようなものになりうる。

こう書いてくると、いいことづくめのような感じだ。
もちろん、公共投資は結局ムダなプロジェクトが中心かもしれないし、薪に火がついても世界景気の後退で消えてしまうかもしれない。
それでも成功する可能性はある。

私は理念としてケインズ政策に批判的である。
だから、公共投資を実行して不況から離脱するなどうれしくない。
後世に間違った例を伝えるからだ。
小泉政権のように予算を減少させている中で、自然と景気が立ち直っていく方がいい。
しかし、今回のアベノミクスは景気回復の絶好のタイミングを捕らえたかもしれない、と思う。
そうなれば、日本にとって喜ぶべきことだ。
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